4 年明け

第74話 一年の終わり

 今年一年の最後の日、シャルルはレオとリリハを部屋に招いて一年の慰労パーティーを開いた。これは中等学校に入ってからの習慣で、今年三回目になる。高等学校に上がったらこのパーティーもできなくなるかもしれない。

 三人は炭酸入りのオレンジジュースを片手に乾杯をし、テーブルに並んだ菓子をつまんだ。

「取り敢えずみんな、高等学校への進学が決まってよかったわね。みんな頑張ったわ」

「そうだね」

 と、リリハの言葉にシャルルも応じた。

「レオも苦手な勉強頑張ってえらかったね」

 シャルルがそう言うと、レオは菓子を頬張りながら「まぁな」と得意げに返事をした。

「レオはスポーツで勝負するのも悪くないよね。サッカーは上手いし足も早い」

 重ねてそう褒めるとレオは激しく頷いた。

「さすがシャルル。よく分かってるな」

 サクレット高等学校にはスポーツ推薦はないが、運動神経のいいレオの才能を眠らせておくのはもったいない気がした。

 中等学校三年生というタイミングのせいか、自然と将来の話になる。

「シャルルは留学どこ行くの?」

「まだはっきりとは決めてないんだ。一応、勉強したいことはあるんだけどね」

 リリハは高等学校でも無難に学業をこなし、ゆくゆくは町を出て大学に行きたいと語った。スウィルビンの町には高等学校までしか教育機関がないので、大学に行こうと思ったら町を出る必要がある。レオもスポーツを極めるのなら学業重視のサクレット学園ではなく、町外の学校へ行くことも視野に入れていいような気がした。

 みんなそれぞれ違った将来があり、小さなこの町から羽ばたこうとしている。三人で過ごせる時間も無限ではない。何もかもあっという間に過ぎ去ろうとしていく中、育んできた三年間の友情は愛しいものだった。

「とにかくみんな、一年間本当にお疲れ様。卒業までもうちょっとだけれど、三学期も頑張りましょ。――大人になったら三人で、ラッフルの町の年越しセレモニーに行ってみたいね」

 シャルルもレオも頷いた。観光都市のラッフルでは毎年年明けと共に盛大に花火が上がる。三人は未成年なので夜中に子供だけでそういう場所へは行けない。部屋でお菓子パーティーを開くのが精一杯だった。

 それでも三人は青春のひとときを楽しく過ごした。

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