3 見送り
第72話 旅のお供に
冬休みは穏やかに過ぎていった。シャルルは学校の図書室に行ったりレオやリリハと一緒に買い物に行ったり、ゆっくり流れる年末の空気を年頃の少年らしく楽しんでいた。
図書室ではベリランダのことを知りたくて本を探したが、その最中にパルに会い、年末年始の帰郷の日を教えてもらった。特に見送りをしてくれる人もいないと言うのでシャルルが見送る約束をした。パルは嬉しそうに礼を言った。
その出立が明日なので、シャルルはアイシスの両親が営んでいる菓子店に向かった。小ぢんまりした店内には二組の先客がいて、所狭しと棚に並んだ焼き菓子を選んでいた。
シャルルが店に入るとカウンターの向こうで店番をしていたアイシスが明るい笑顔を浮かべた。
「シャルル先輩、いらっしゃいませ」
「こんにちは、アイシス」
そう挨拶をして、シャルルも棚の焼き菓子を見た。その間に二組の先客は会計を済ませて帰っていった。接客が一段落し、アイシスはカウンターから出てきた。
「シャルル先輩、来てくださってありがとうございます」
「久し振り、アイシス。パルが明日故郷に帰るから何か旅のお供になるものをあげたいんだけど」
「そうだったんですね。お店のおすすめをいくつか詰めましょうか」
「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」
アイシスは棚から五、六個菓子を選んで透明な袋に詰め、綺麗にリボンを掛けてくれた。
「これでどうでしょう」
シャルルは笑顔で頷いた。
「ありがとう。アイシスは包装が上手いね」
「いつもやってますから」
アイシスはそう笑って、会計も手早く済ませてくれた。
帰り際、アイシスは急に寂しげな表情を浮かべた。
「シャルル先輩も、そのうち留学に行ってしまうのですよね。セルシオ先輩も町を離れるし、お二人がいなくなるなんて寂しいです。シャルル先輩がいてくださらなかったら、私はセルシオ先輩とはお会いできませんでしたから」
「そうだったね。でも、俺はまだ留学はしないよ。行き先だって決めてない」
「でも、ゆくゆくは行ってしまうのですよね。パルもずっとこの町にいてくれるわけではないでしょうし……。将来のことを考えると寂しくなります。どうか、パルによろしくお伝えください」
シャルルは微笑を浮かべて頷いた。
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