第55話 ダリアのメダル
シャルルは試験前にパルと話したことをダリアに話した。
「そうでしたの……。あの方は本当に、ゴールドメダルに相応しい方だったのね……。お兄様ですら楽しいなんて言ったことはなかったのに。もっときちんとあの方を祝福すればよかった。すぐ隣にいらしたのに」
「仕方ないよ。パルも今回の結果にはびっくりしてた。期末試験ではアイシスの方が首位だったみたいだしね」
「学力コンテストと期末試験の結果がねじれることはよくあることですね」
「ダリアは期末試験どうだったの?」
ダリアは風に吹かれた髪を押さえながら微笑みを浮かべた。
「そちらの方は目標通りの順位をいただきました。シャルルは?」
そう訊かれ、シャルルは自虐的な笑みを浮かべた。
「まぁまぁってところかな。自慢するような結果じゃないよ」
ダリアはどこか後悔を表すような目でシャルルを見た。
「今回はわたくしがあなたの時間を奪ってしまいましたから」
「それはあんまり関係ないかな。いつも通りの成績だったし。学力コンテストに関してはあれでも普段よりよく出来た方なんだよ。俺、一人で勉強するより人と一緒に勉強してた方が記憶に残りやすいみたいで。試験勉強もいつも友達と一緒にやってるくらいだから」
「シャルルらしいわね」
と、ダリアは笑った。彼女は手摺りに手を掛け、いつもより増水した川面を見つめた。
「シャルル、今回は本当にありがとうございました。あなたに助けていただいて、とても嬉しかった。どうしてもお礼が言いたかったの。たくさん力をいただきましたから」
「ダリアが自分で頑張ったんだよ。俺は何もしてない」
「そんなことはありません。あんなふうに励ましてもらって、本当に嬉しかったのよ」
ダリアはポーチの中からメダルを取り出した。
「これがわたくしのメダルです。一人で無理をしていたら、このメダルもいただけなかったかもしれません」
シャルルは差し出されたメダルをそっと手に取って眺めた。
「――綺麗な色だね。輝いてる」
「ありがとうございます。わたくし、いつかパルさんに、直接おめでとうと言いたいわ」
ダリアはそう言って雄大なユーゼル川を見つめた。
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