第52話 王者
結果発表で講堂がざわついた時、シャルルはようやく胸騒ぎの正体を悟った。パルもダリアも悪くない。互いに全力を出した結果が順位として現れただけのことだった。ただ、ダリアの目標もパルの性格も両方知っているシャルルには、この結果が二人にとって痛ましいものであることが容易に想像できた。
シャルルはパルの背中に手を当てたまま言った。
「パルは何も悪くない。そんなこと分かってるだろ?」
「でも、シャルルも聞いたよね、あのざわめき。みんなあの人が首位を取ると思ってたんだよ。それを僕が奪ったんだ」
「確かに俺もびっくりした。朝から妙な胸騒ぎがするとも思ってた。でも、パルは言ってたよね。学力コンテストの過去問題を解くのは楽しかったって。俺、試験前にダリアとも少し話したんだけど、ダリアも学力コンテストの過去問題には苦しんでるみたいだった。あれを楽しんで解いてる人がいるなんて信じられなかった。――パル、君は本当にゴールドメダルは自分に相応しくないと思ってる? ダリアと君と、両方の話を聞いている限り、パルはゴールドメダルに相応しい王者だと思う。俺は祝福する」
「――シャルル……」
パルはシャルルを見た後、まだ後ろめたい様子で俯いた。シャルルは諦めずに言葉を重ねた。
「ダリアもゴールドメダルを目標にして頑張ってた。みんなの期待がプレッシャーになってそのことにも苦しんでるみたいだった。それでも一生懸命闘った。あの子の欲しがってたもの、大事にしてほしい。きっとダリアにもすぐに分かってもらえる。パルに王者の風格があること」
パルは小さく首を左右に振った。
「王者だなんて、僕は……そんなんじゃ……」
「パル、メダルは持ってる?」
「……持ってるけど……」
「貸してもらえる?」
パルは鞄からメダルを出してシャルルに渡した。重いメダルだった。シャルルはメダルの紐を左右に広げて持ち、パルの首に掛けた。
「俺はメダルにはかすりもしなかったな。八位だったから」
シャルルが笑うと、パルにもようやく微笑みが浮かんだ。
「おめでとう、パル。似合ってるよ」
「…………ありがとう、シャルル」
パルの胸に、澄んだ金色のメダルが光った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます