第51話 メダル
――僕が首位? そんなわけない。何かの間違いだ。
そんな思いが喉の奥に響き、唇が無意識に震えた。
「パル・ブリード、前へ出なさい」
教頭に促されてパルははっとし、列を抜けて壇前に並んだ。アイシスはいつも通り落ち着いていた。ダリアの表情は上手く読み取れない。
三人は教頭に言われ、壇に上がった。
アイシス、ダリアの順にメダルを授かっていく。メダルを受け取る時、アイシスは微笑み、ダリアは硬い表情だった。
パルにもメダルが授けられた。顔は青ざめていた。首に掛かったメダルは重かった。本当なら喜ぶべきことだが、自分には似合わない賞を取ってしまったようで怖かった。
壇を下りる時、三学年の列にいるシャルルと目が合った。険しい顔をしていた。一学年の列からはサクシードが光のない目を向けていた。
急に心細くなり、泣きたい気持ちになった。メダルなんか投げ捨てて、幼い子供のように大声で泣きたかった。溢れる恐怖心を必死に胸に抑え込んでいた。
教室に戻ると改めて担任教師がパルとアイシスの功績を称え、クラスメイトが拍手をしてくれた。休み時間にはアイシスが「パル、おめでとう」と声を掛けてくれた。本当ならパルも「アイシス、おめでとう」と言うべきだったのだろうが、そんな余裕もなく、ただ無言で小さく頷くだけだった。サクシードは何にも心を動かさない様子で席に座っていた。
放課後、一人で校舎を出ると、校門の脇にシャルルの姿が見えた。パルははっとして足を止めた。
「パル」
と、シャルルに名前を呼ばれただけで、抱えていた恐怖心が崩れ、目頭が熱くなった。
「――シャルル、僕は……僕は――」
シャルルは泣き崩れそうなパルの背中に手を当て、何も言わずに校門を出た。誰にも邪魔されずに話ができる場所――中間試験の後、二人で語り合った町の北西の川辺に、パルを連れていった。
パルは声も上げずに静かに泣き出した。
「僕、こんな結果になるなんて思わなかった。きっとあの人が――ダリアさんが首位を取ると思っていたから……自分がゴールドメダルを持っているなんて、怖くて……どうしたらいいのか分からなくて……」
シャルルはパルの背中をさすりながらその言葉を聞いていた。
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