第50話 首位

 朝日の差す広い講堂に全校生徒が集まる中、パルは強い緊張と不安に襲われていた。今回の結果発表に限らず、試験結果の発表前はいつも悪い結果を想定してはらはらした。昨日発表された期末試験の結果は苦手な副教科の点数が響き、平均点は振るわなかった。きっと今回も一学年の首位を取ったのはアイシスだろう。学力コンテストは五教科しか行われないし、学年に関わらず順位が付くので期末試験とはまた違う結果が出るのかもしれない。

 全校集会が始まり、校長が挨拶をしている間もパルは上の空だった。同じ列に並んでいるアイシスは背筋を伸ばして凛とした立ち姿で話を聞いている。彼女も学力コンテストに参加したが、結果発表を前に動揺した様子はなかった。パルも彼女に倣って背筋を伸ばし、校長の話を聞いた。

 長く感じたその話が終わると、次は学力コンテストの結果発表だった。三十位から四位までは廊下に紙が貼り出され、そこで発表される。ここで発表されるのは上位三名だけだった。パルは前回メダルを逃したので今回もそうなのかもしれない。だが、首位だけは誰が取るのかパルにも分かった。ここにいる生徒のほとんどが二学年のダリア・サクレットを思い浮かべているはずだった。

 パルは大きく息を吸って長く息を吐いた。

 講堂の壁際から教頭が声を張った。

「それでは、これから学力コンテスト上位三名の表彰式を行います。名前を呼ばれた生徒は前に出るように」

 そうして結果発表は始まった。

「第三位、一学年、アイシス・ホワイル」

 アイシスは凛とした立ち姿のまま列を抜けた。アイシスが前に進んでいくのを見ながら次の発表を待つ。教頭はアイシスが壇前に並ぶのを見届けてから次の発表に入った。

 ところが、この発表で講堂中にざわめきが起こった。心なしか教頭の口振りも重く、壇上に立つ校長と何か目配せをしたような気もした。

「第二位、二学年、ダリア・サクレット」

 パルも驚いて目を見張った。とっさにダリアの姿を探そうと二学年の列を見たが、彼女がどこにいるのかパルには分からなかった。他の生徒も同じ気持ちだったようで、大勢の視線が二学年の列に注がれた。ダリアはざわめきの中、列の前に出てきた。大きく開いた瞳と引き締められた唇からは何の感情も読み取れなかった。

 そしてパルは、更に驚愕の結果を聞くことになった。

「第一位、一学年、パル・ブリード」

 それを聞いた瞬間、パルの頭は真っ白になった。

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