2 結果

第48話 不安

 学力コンテストから一週間が経ち、結果発表の日になった。期末試験の結果は昨日生徒それぞれに成績表が配られ通知されたが、学力コンテストの結果は全校集会で発表され、同時に表彰も行われる。

 朝、ダリアはもやもやした嫌な予感に襲われながら身支度を整えた。結果発表の前に緊張するのはいつものことだが、今回は緊張とは別に、薄気味悪いわだかまりを感じた。

 自分はここで平穏に存在していてもいいものなのか、もっと深く救いようのない落とし穴に落ちてしまわなければならないのではないか。脈絡なく急にそんな疑いを持った。

 この嫌な予感は単なる杞憂なのか、それとも何かの予兆なのか。

 結果を知るのが怖くなった。どんな結果であってもこの身一つで受けなければならない。悪い結果だった場合、それを受け止める覚悟が自分にあるだろうか。ダリアには自信がなかった。

 以前シャルルに、怖くなったら誰かに頼った方がいいと言われたが、いざその時になると、誰にどう頼ればいいのか分からなかった。兄は高等学校へ行くし、シャルルは学園区の入り口で級友と合流して登校するし、母に相談すれば心配するだろう。今すぐに頼れそうな人はいなかった。

 ダリアが熱を出した後、母は子供達の成績に拘る夫に猛抗議をした。

「ダリアが倒れたのはあなたのせいですよ。あの子達に何かあったら、わたくしは絶対にあなたを許しませんからね」

 激しい剣幕でそう言ったのだった。さすがの父も押しの強い母には逆らえず、ダリアやセルシオへの圧力も弱めてくれた。

 母も病み上がりのダリアに無理はさせまいと目を光らせた。食事は必ず三食摂ること。遅くとも夜十一時には就寝すること。この二つだけは必ず守るように言われ、ダリアもそれに従った。

「ダリちゃん、どんな結果でも誇りを持っていいのよ。あなたなら絶対に大丈夫。胸を張って堂々としていらっしゃい。お母さんもずっと、応援してるから」

 試験前、母はそう言ってダリアを励ましてくれた。これ以上心配は掛けられない。

 登校の時間になり、ダリアは外出の挨拶をするために母のいる居間を覗いた。

「お母様、行って参ります」

 母は飲んでいたお茶のカップを下ろして頷いた。

「行ってらっしゃい、ダリちゃん。気を付けてね」

「はい」

 そう返事をして、ダリアは出掛けた。

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