4 土曜の午後

第43話 意外

 期末試験も二日後に迫った十二月初めの土曜日、シャルルはしばらく顔を合わせなかったパルの様子を見に寮を訪ねた。勉強の邪魔になるようならすぐに帰るつもりだったが、パルはシャルルの来訪を喜んだ。午前中、集中的に勉強をして午後からはゆっくりする予定だったらしく、シャルルが訪ねた時、パルは休憩をしているところだった。天気が良かったので気晴らしに二人で散歩に出掛けた。

 十二月に入っても冬らしい寒さはなく、薄手の上着を羽織るだけで十分あたたかかった。二人はゆっくり歩きながら近況を話し合った。

「パル、試験勉強はどう? もうあらかた終わった?」

「うん。試験期間が始まってからずっと部屋で勉強してたから」

「学力コンテストの過去問題、難しかっただろ?」

「難しかったけど楽しかったよ。分からなかったものが分かるようになるって、すごく楽しい」

 シャルルは内心驚いた。学力コンテストの過去問題は厄介なものが多かったし、ダリアも苦しんでいた。パルはそれを楽しんで解いたらしかった。

「パルはすごいな。俺は学力コンテストの問題はちょっと苦手だった」

 今度はパルが意外そうな顔をした。

「シャルルにも苦手なものがあるの?」

 シャルルは笑った。

「そりゃそうだよ。たくさんある」

「僕の目にはシャルルは何でもできる人のように見えるよ」

「残念だけど、そうじゃないんだ。できることよりできないことの方が多い」

「……そうなんだ」

 二人は時間を掛けて、寮のある学園区から広場へ向かった。土曜日の広場には休日を楽しむ人々が集まっていた。二人は向かいから歩いてくる人々を避けながらユーゼル川沿いの遊歩道を歩いた。小型の定期船がゆるやかに川面を進んでいく。波が美しく光った。

「ねぇ、シャルル」

 と、パルが言った。

「最近、サクシードはどう?」

「サクシード?」

 シャルルは首を傾げながら答えた。

「俺もあんまり顔を合わせないからよく分からないけど、また何かされた?」

「そうじゃないんだけど、最近様子が変だと思うんだ。前よりずっと、塞ぎ込んでるような気がする」

 パルにそう言われ、シャルルは険しい目で遠くを見つめた。

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