第34話 ノート

 いよいよ試験期間が始まり、シャルルはレオやリリハと一緒に放課後の図書室で試験勉強をした。周りには同じように試験勉強をする生徒達が集まり、図書室は満席に近かった。アイシスも勉強のために来ていたようで、シャルルを見かけると挨拶をした。

「うちはお店をやっているので夕方は図書室の方が落ち着いて勉強できるんです」

 アイシスはそう説明した。

 パルはいつも寮の部屋で一人で勉強するらしく、試験前の図書室で見かけたことはなかった。

 レオを真ん中に座らせ、シャルルとリリハで勉強を教えていく。リリハが言っていたように、シャルルもこうしてレオに勉強を教えることで頭が整理された。シャルルは決して飛び抜けて勉強ができるというわけではない。本人も興味のあることしか頭に入ってこないことを自覚していた。学力コンテストのメンバーに選ばれたのもほとんど偶然のようなものだった。

 図書室は六時で閉室になる。約二時間の勉強会でへとへとになったレオを励ましながら片付けをしていると、数人の女子生徒がシャルルに声を掛けてきた。

「シャルル先輩、ちょっといいですか?」

 彼女達はダリアの級友だった。

「これ、ダリアさんのノートなんですけど」

 一人の女子生徒が一冊のノートを差し出した。

「試験勉強のためにダリアさんが貸して下さって、今日お返しする約束だったんですけど、ダリアさん、今日はお休みされてしまって。本当ならお屋敷まで伺うべきなんですけど、私達、高等住居区に行ったことがなくて、何となく行きづらくて……」

 確かに高等住居区は物静かで独特の雰囲気がある。住人でもない中等学校の女子生徒が足を踏み入れるのは勇気がいるだろう。

「このノートをダリアに返して欲しいってことだね?」

「はい。シャルル先輩はダリアさんのお隣に住んでいると聞いたことがあったので」

 シャルルは微笑んで頷いた。

「いいよ。俺が返しておく。預かるよ」

「お願いします」

 女子生徒達はノートをシャルルに預け、深々と頭を下げた。

 彼女達が去った後、リリハが興味深そうにシャルルの背後からノートを覗いた。

「ダリアさんって、二学年のあの子よね。体調でも崩したのかしら」

「さぁ……。それとなく様子を見てくるよ」

 シャルルも不思議に思いながらノートを見つめた。

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