5 ポート街の最奥で
第24話 再会
十一月の下旬、晴れた日は暖かく、雨の日は寒い。寒暖の差が激しかった。
来週から期末試験の試験期間が始まる。この期間が始まると、シャルルはいつも級友のレオやリリハと一緒に放課後の図書室で勉強会を開いた。運動は得意だが勉強が苦手で高等学校への進学も危うかったレオをリリハと一緒に支えてきたが、二人の醸す明るい雰囲気にシャルルもまた救われてきた。
「レオに勉強を教えてると私も頭の中が整理されて助かるの。シャルルも分からない所を教えてくれるし、ほんとありがとね」
そう言って、リリハも乗り気で勉強会に臨んでいるようだった。
「試験期間かぁ……。めんどくせぇなぁ……」
そうぼやくレオも、勉強会が始まれば素直に勉強に取り組んだ。中等学校で三人揃って勉強会を開けるのも、後二回だけだった。同じ学校へ進学しても、今までの習慣が続くとは限らない。そう思うと感慨深いものがあった。
試験期間が始まれば放課後の自由時間もなくなる。その前に、女詩人に会っておきたかった。
昼間は晴れて暖かかったが、夕方になると寒かった。コートを羽織っても寒さを感じる。
シャルルは学校を出てポート街へ向かった。前回の騒ぎとは打って変わり、ポート街は静かだった。帽子の男が待ち構えている様子もない。シャルルは砂埃の舞う大通りを進んでいった。
ポート街の最奥で、女詩人は木箱に座り、痩せ細った首を伸ばして虚空を見ていた。
「お姉さん」
と、シャルルは少し離れた所から彼女を呼んだ。女詩人もシャルルに気付いて「こんにちは」と会釈をした。シャルルは木箱の前に跪き、女詩人の顔を見つめた。
「会えて良かった。元気だった? この前来た時は会えなかったから心配してたんだ」
「前にも来てくれたの? 留守にしてごめんなさい。あなたも元気だった?」
シャルルは頷いた。
「お姉さん、寒くない?」
女詩人は微笑を浮かべた。
「少し寒いかな。最近、冷えるようになったね」
シャルルは通学鞄から一枚の膝掛けを出し、女詩人の膝に掛けた。トムじいさんの見舞いの時にふと思い立ち、彼女にも同じものを用意したのだった。
思わぬ施しに、彼女は驚いてシャルルの顔を見た。
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