第14話 ライバル

 鉢合わせになった相手は三学年のシャルル・コーレルだった。相手もダリアの顔を見ると、さっと顔色を変えた。近所に住む仲で幼い頃は拘りなく頻繁に遊んだが、成長に連れ疎遠になり、お互い遺恨らしい遺恨があるわけでもないが、今では何となく馬が合わないと感じるようになった。

 ダリアの級友達の手前、二人は角を立てないよう、淡々と落ちたものを拾った。

「はい、これ。ぶつかってごめん。怪我はなかった?」

 シャルルは拾ったものを渡しながら言った。

「ありがとうございます。わたくしは大丈夫です。よく前を見ずに歩いていたものですから。申し訳ございません」

 二人は相手の顔色を窺いながらなるべく丁寧に接した。こんな所で無駄に火花を散らしても何の得にもならない。

 シャルルは荷物を渡すと軽く会釈をして去っていった。ダリアも会釈を返し、その背中を見送った。

「シャルル先輩もコンテストに出るわよね?」

「うん。いつもいい所まで行くけれど、メダルを取らないこともあるわよね」

 ダリアの後ろで級友達が言った。

 このコンテストでは一位から三位までの生徒にメダルが与えられる。その中でもゴールドメダルは首位を取り続けることを目標としているダリアにとって特別なものだった。コンテストに参加する面々は手強い相手ばかりで、今までも決して絶対的な自信を持ってコンテストに臨んできたわけではない。時間を掛けて入念に準備し、緊張しながら本番に臨むのだった。

 シャルルはあまりコンテストに拘りがないのか、シルバーやブロンズのメダルを取り逃しても平然としていた。ただ、肩に力が入っていない分、精神的な乱れもなく、確実に点を重ねて上位に食い込んでくる強者だった。油断はできない。コンテストに参加する以上、誰でもゴールドメダル獲得のチャンスはあるのだ。

 彼の妙に達観した精神はダリアの未熟さを鋭く見抜き、その点を刺激しないよう絶妙に加減して接してくるように思われた。シャルルが精神を乱した所など見たこともないが、取り乱せばやはり人間らしい脆さを露呈するのだろうか。あまり想像できない。

 シャルルの強さを思う度、自分の弱さに嫌気が差して悔しかった。それが、ダリアがシャルルを苦手としている所以だった。

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