5 ダリア

第13話 ダリア

 中等学校二学年の試験結果は誰もが予想した通り、サクレット家の子女・ダリアが首位を取った。

 華やかな家柄に生まれ、オーラもあり、勉強もよくでき、美しいものを見極める感性も鋭い――そんな理由から、彼女の側には知らず知らず女子生徒達が集まった。家柄の違うダリアに上手く接するすべが身に付いていないのか、彼女達は時折媚びを売るような言動をした。本人達にそんなつもりがなくても、傍から見れば歪な力関係が働いているようにも見えた。

 ダリアは油絵を描くことが得意で、つい最近もコンクールに入賞した。その絵が学校の玄関に飾られている。

「ダリアさんの絵、凄く素敵ですね」

「本当、中間考査も首位だったし、きっと期末考査と一緒に行われる学内選抜の学力コンテストも首位よ。一学期もそうだったもの」

 級友達のそんな話に、「そうなるよう、頑張ります」と、ダリアは答えた。

 学内選抜学力コンテストというのは年に二回、学期末考査と共に行われるコンテストで、一年生から三年生まで、その学期の中間考査の成績優秀者各十名ずつが選ばれ、知力を競う。ダリアは中等学校に入学して以来、そのコンテストで上級生を抜いて上位を取り続けていた。去年はダリアの兄・セルシオが中等学校に在籍していたので首位の座は取れなかったが、今年は兄も高等学校に進学し、首位の座はダリアが継ぐ形になった。

 ――私もお兄様と同じように首位を取り続けたい。一度たりとも取り逃したくはない。お兄様の後を追い続けたい。

 そんな願望があった。

 級友達の媚びにダリアは大抵当たり障りなく微笑んで答えるが、胸の中には違和感が落ちていた。

 ――家柄の垣根なんて越えてもっと気軽に接してくれればいいのに。その方が、私はずっと嬉しい。

 級友達に囲まれながら、孤独を感じて切なかった。

 狭い廊下を五、六人の集団で歩いていたので、ダリア達は曲がり角を曲がった途端、向こうから歩いてきた男子生徒と出会い頭にぶつかった。

 驚いた弾みでダリアは腕に抱えていた荷物を廊下に落とした。

「あ、ごめんね。大丈夫?」

「わたくしの方こそ、申し訳ございません」

 二人でしゃがみ込んで荷物を拾い集めた。しかし、相手の男子生徒の顔を見た途端、ダリアはさっと青ざめた。

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