第12話 強くなりたい

 この小包は本当なら昨日アイシスから直接受け取るはずのものだった。

 シャルルの顔を窺うと、シャルルもまた、パルの顔を窺っていた。

「あ、ありがとう、シャルル。その、僕……」

 小包を渡してくれた礼を言うと、シャルルは首を左右に振った。

「礼ならアイシスに言ってやれよ」

「でも僕、冷たい態度取っちゃったから、どう接したらいいのか分からない」

「アイシスは気にしてないよ。冷たい態度を取ってしまったなら謝ればいいんじゃないのか?」

「……それでいいのかな」

「アイシスはパルが心を開いてくれることを待ってるよ。これ以上傷付けたくないなら、ごめんって言ってやれよ」

「うん……そうだよね……」

 パルは小包を握りながら俯いた。シャルルはそんなパルを真っ直ぐ見据え、言葉を続けた。

「謝らなきゃいけないのはパルだけじゃない。俺だってパルに謝らなきゃいけない。こんな怪我までさせて、本当にごめん。サクシードがあんなに荒れてるのは、多分、俺のせい」

「何か心当たりでもあるの?」

「色々とね」

 パルは人懐こい微笑みを浮かべて言った。

「僕はシャルルには感謝してる。助けてくれてありがとう」

 シャルルは何と返事をしたらいいか分からず、ただ悲痛な笑みを浮かべた。

 空はみるみる暮れていき、辺りは少しずつ暗くなった。川向こうの工場灯りが綺麗に映える。パルは故郷を思い出すように工場灯りに遠い視線を向けた。

「中等学校に入学する時に初めてこの町に来たけれど、まだまだ分からないことばかりで大変だから、気に掛けて貰えるのは嬉しい。何とかやっていけてるのはシャルルのお陰」

「そうか……。困ったことがあるなら何でも言ってくれればいいけど」

 パルは迷うように川面に視線を投げた。

「ありがとう。……でも僕は、もっと強くなりたいな」

 パルの秘められた芯の強さに触れ、シャルルも川面を見つめた。

「強くなりたいのは、パルだけじゃない。俺だって、強くなりたいよ」

 もう十分強いと思っていたシャルルからそんな言葉を聞き、パルは思わずその横顔を見つめた。

 誰にも邪魔されずに語らう二人の姿を、星々が見ていた。

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