2 パル

第4話 パルとサクシード

 先週あった中間考査の結果は今日発表され、パルは学年二位の成績を収めた。

 スウィルビンから少し離れた貧しい農村に生まれながら、成績が優秀だったのでサクレット中等学校に特待生として入学し、学費を免除された上、月十万テールの奨学金を受けている。

 それに不満を抱いているのが同じ学年のサクシードだった。スウィルビンの町でも指折りの名家、コーレル家の次男として生まれ、中等学校入学の際にはパルと同じ特待生に選ばれるほど勉強ができた。

 ただ、彼の心は歪んでいた。貧しい生まれのパルと裕福な生まれの自分が同じ特待生であり、しかも成績はパルの方がいつも上。プライドを傷付けられ、パルを恨み、試験でパルの方が成績が良ければ学校の裏庭に呼び出し、金を奪って顔を打つ。

 今回もそんな経緯で裏庭に呼び出された。

 放課後の空は悲しいくらいに赤く染まっている。

 その光も校舎に遮られ、裏庭はじめじめと暗かった。

 ポケットに入れた三枚の紙幣を握りしめ、パルはサクシードを待った。五万テールを持って裏庭に来い――それがサクシードの言い付けだった。しかし、奨学金から生活費を出し、実家へ仕送りもしているので五万テールもサクシードに渡すわけにはいかない。逆らえば厳しい報復が待っていることも承知で三万テールしか持ってこなかった。

 微風の中に地面を踏むざらついた足音が聞こえた。

 足音は三人分。サクシードは二人の取り巻きを左右に従え、ナイフのように鋭い目を光らせてパルの前に現れた。

 これが何度目の苛虐だろう。これからの成り行きに説明などいらない。

 サクシードはポケットに突っ込んだ手をパルの方へ差し出し、冷たく刺すような声で言った。

「金は持って来たんだろうな。出せ」

「……三万だけね」

 パルはそう言いながら三枚の紙幣を出した。

 サクシードの顔色がさっと変わった。

「どういうことだ。五万持って来いと言ったはずだぞ」

「そんな大金ないよ」

「奨学金はどうした」

「…………」

 説明したところで手加減をしてもらえるわけでもない。黙って立ち尽くしていると、とうとう一打ちの拳が飛んできた。

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