第9話
スマートフォンを開いて、結さんにメッセージを送ろうとした。
『明日、学校で話があるんだけど放課後もし予定が無かったら教室で待っててもらっても良いかな?』と送る瞬間、、、
『ねぇ、板里君、明日話があるんだけど良いかな?』
そう結さんから送られてきた。
この丁度のタイミングで送られてきた。
俺は心臓がバクバクした、どう返そうか迷った。
とりあえず書いた文を消した。もちろん良いのだが、どう返したら良く見えるの分からなかった。
なのでここは普通に『うん、大丈夫だよ。待ってます。』と返信しておいた。
―――――――――――――
ここは勇気を出して頑張って板里君に話しかけよう。そう思い、、、
『ねぇ、板里君、明日話があるんだけど良いかな?』
これを送った私は少し強くなった気がした。スマホを見てみると、既にもう既読がついていた。私はどう返ってくるのかに期待を膨らませていた。それから数分間既読が着いたままで返ってくることはなかった。
それから二分後、ようやく返信が返ってきた。返信が返ってきたことを知らせるスマホのバイブ、私はそれよりも手が震えていた。
スマホをつけるとやはり板里君からの返信だった。
内容は『うん、大丈夫だよ。待ってます。』というものだった。
久しぶりに話すきっかけが ”会いたい” というような内容でそれでそのお願いを受け入れてくれた。これだけで私は嬉しかった。
久しぶりに板里君と直接話せる!
私は自分のベッドに飛び込み、喜んでいた。
明日は板里君に気持ちを伝える日。
失敗しないように私は頭の中で予行練習した。
――――――――――――
俺は朝、少し早めに起きて学校へ行く支度をした。
私は朝、いつも通りに起きて学校の準備をした。
天気は晴れ、あの時よりも少し肌寒くなったような気がする。
丁度校門の方に向かうと、あの人に出くわした。
顔が赤くなり、熱くなった。
ここで会って何も言うわけにもいかない。そう思い俺は「おはよう」と結さん言った。
結さんはニコッとして「おはよう」と言ってきてくれた。
久しぶりに話したが相変わらず、かわいいし元気だった。
おはようと挨拶を交わしただけでその後、お互いの教室に行った。
私は板里君の声を久々に聞いたような気がする。
「おはよう」この一言だけでなんか安心した。
人は人の事を忘れる時、一番最初に忘れるのは顔でも、体型でもなく、声らしい。
だから私は板里君の声を忘れていた。だから聞けた時は嬉しかった。
声のトーン、優しい声などいろんなことが思い出せた。
HR《ホームルーム》が終わり、一限目は音楽だ。
なので音楽室に移動しなければならない。
実香と一緒に廊下へ出ると、板里君が廊下に居た。そうするとこちらを見てニコッとしてくれた。
私は恥ずかしさのあまりダッシュで音楽室へと向かってしまった。
なにか話したいなと思っていたが、現実はそう甘くなかったなと思った。
後から来た美香は音楽室に居る私のところへと来た。
「ねぇねぇなんで走って行ったの?」
少しいじっているような気がした。多分なんでかは知っている。
「うるさいなぁ、実香は絶対分かってるじゃん」
「えー?分かんないなぁ」
そう話していると授業が始まった。
音楽はその場の勢いでやり過ごせばなんとかなる。
今日の授業内容はクラシックギターだ。
Dコードやら、Cコード色々とあるが初めてなのでよく分からない。これには実香もお手上げのようでよく分かってないらしい。
指で弦を押さえても何処かの弦に当たってしまい変な音が鳴ってしまう。
そうしていると隣から美香が話しかけてきた。
「ねぇ結、まじで分からないんだけど。教えてくれない?」
「えー、わたしもよく分からないよ」
「何コードって?まじで分からないんですけど!」
何故か少し半ギレの美香だった。
その後も少し練習していると、チャイムが鳴り授業が終わった。
早く放課後にならないかなと思いながらも教室に戻った。
一限目が終わった。苦手な数学も終わった。
次は、、、物理だ。
今日の物理は実験があるので、実験室に行かなければならない。
俺は亜紀と友達で行くことになった。
結さんの教室とは反対方向だったので会えなかったが、まぁ放課後に会う約束をしているので良いかなと思った。
授業が始まった。まずは先生から色々と実験の説明を聞き、実験の準備を始めた。
隣の班を見ると、よくヤンチャしてる人が固まっている。
ちょっとだけ心配になったがなんとかなると思い、準備を続けた。
二限目は数学だった。私の嫌いな数学だった。
とりあえずノートを開き話を聞いていた。
授業が始まってしばらくのことだった、突然、大きな音がした。そのあと直ぐにジリジリという警報が鳴った。教室にいる誰もがみんな、防災訓練だと思った。
だが、先生の顔を見ると焦ったような顔をしていた。
放送がかかった。
「警報が鳴りました。生徒は今すぐグラウンドに避難しなさい」
呼び掛けが入り、先生は急いで私たちを集め、安全な避難経路から避難をさせた。
これも毎年行われてる防災訓練の内容と一緒だと思っていたが、先生が大きな声で「お前らこれは訓練じゃない!今、本当に起きた事だ!落ち着いて避難しなさい!」
それを聞いた人たちは一瞬で状況を理解し、慌てて避難していた。私も美香も避難をの為にグラウンドに向かった。
靴を履き替える暇も無いので、スリッパのままグラウンドへ行った。
グラウンドから実験室を見ている人が多かった、なので見てみると火が窓から飛び出して燃えていた。
私たちのところに急いで担任が来て、人数確認の為、私たちを一列に並ばせた。
そういえば隣のクラスには板里君がいるはず。巻き込まれてないかなと思い
隣を見てみると、板里君のクラスはいなかった。
私は必死で探した。もしかしたら奥の方に居るかも知れない。
まさかそこの現場に居合わせたりしてないよね?
すると私の耳に情報が入ってきた。
「なぁ実験室にいたの24Hらしいぜ。実験中に爆発が起きたらしくて、それであぁなったらしいぜ」
「まじかよやべぇな」
頭が空っぽになった。
思いたくなかったことが実際に起きてしまうなんて。
私は実香に話しかけた。
「ねぇ、実香、、、今の聞いた?」
「え?誰かなんか言ってた?」
「爆発にあったの板里君のクラスだって」
「え、それ本当?」
「うん、そうらしい」
私は正気が保てなくなった。
今、私にできることは無いのか。
このまま、本当にここにいても良いのか。
私たちは一度校門の方へと移動することになった。
もう訳が分からなくなった。
すると、学校の方に複数の消防車や救急車、パトカーが駆けつけた。
到着すると消防隊員は消火活動の準備に入り、救急隊員は現場での負傷者の数を教師に確認していた。
急いで消火活動が行われた。火は少しづつ消えていってはいるが、そう簡単に消えるわけでもない。約二十分後、火は完全に鎮火された。
それと同時に救急隊員は急いで実験室にいる負傷者への救出に向かった。
だんだんと担架に乗せられている人が見えてきた。
そこには板里君の姿があったが見ることしかできなかった。顔は灰などで黒くなっており、意識は無かったかのように思える。周りからは泣いている声がした、私も泣きそうだった。可能ならば助けたいし、近くに行きたい。
でも、そんな事をしたって意味がないのは理解している。
その後、警察はその時の様子を知りたいが為、先生などから事情聴取などをしていた。
その後、私たちは下校となり、そのまま真っ直ぐ家に帰った。親に迎えに来て欲しかったが、それを報告する余裕も無かった。
自分の部屋に行き、私は泣いた。
今日の放課後、私は会う予定があったし何より自分の気持ちを伝えるという大事な日だった。
事故が起こった一時間前には、あんな最高な笑顔を見せていたのに。
そう思うと余計に涙が出てきた。
それからどれだけ泣いただろうか、その日はずっと泣いていたような気がする。
この日から学校はしばらくは休校となった。
24Hの人の中で爆発が起きたその班の人全員と隣の班の一人を除いた人がその場で亡くなった。その一人は意識不明の重体だ。ちなみにその一人とは板里君のことだ、運良く生き残ったらしい。他の人達はほとんどが意識不明であり、その後に亡くなる可能性がまだ無くなったわけでもない。
―――――――――
私はこの休校中に板里君の家に向かった。板里君の家は私と同じクラスの友達に聞いた。
インターホンを押すと、お母さんらしき人が出てきた。
「こんにちは。私、板里君の友達の布村結です」
「あら、そうなの、入ってちょうだい」
それからしばらくするとドアが開き、少し背の高めなお母さんが出てきた。
「いらっしゃい、どうぞ入って」
「ありがとうございます。お邪魔します」
家に入ると、花の良い香りがした。
そのまま着いていくと、リビングに連れて行かれ、「座って」と言われたので近くにあるソファに腰を下ろした。
「今日は来てくれてありがとうね、それで今日はどうしたの?」
優しい声で私に尋ねてきた。
「今日は、板里君のことについて話したいと思いました」
「そうなのね、昨日あんな事があってね、私もまだ気持ちが追いつかないのよね。昨日の朝は少し早めに出て学校に行ってたわね、どこかワクワクしてたような気も
してたの。」
「そうだったんですか、、、」
私は思い出したあの時、『楽しみにしてる』と言っていたしあれは本当だったのだと思った。
「その日の前の夜、私は板里君と話していたんです。それで明日話したいことがあると言ったら、楽しみにしてるって言われたんです。そして今、ワクワクしてたような気がするって聞いてあれは本当だったのだと今気づいてそれが嬉しかったんです」
「あの子は本当に良い子だったの、人のことも悪く言わず、素直で優しい人だったわ。だから多分その時も気持ちが表面に出たんでしょうね」
そう話しているお母さんは少し泣きそうになっていた。
そしてまた、お母さんが口を開いた。
「今日、泰斗のお見舞い行くのだけど、あなたも一緒に来る?」
「良いんですか?ぜひ行きたいです、あの人に会いたいです」
「そう、なら行きましょうか」
そして私は一緒に板里君が入院している病院へと向かった。
神様お願いです。板里君を助けてください―――
次回、最終回
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