第4話

ー 一年生の頃 ー

 その夜、私は勇気を出して板里君にメッセージを送ろうと思った。男子に話しかけるのは人生の中で片手の指で数えられる位しかなかった。そして久しぶりにカウントされる。


 お風呂にも入り、夜ごはんを食べ終わってやることを済ましてついに板里君に話しかける時間になった。もちろん板里君はこの事を知らない。

 スマホを持っている手は震え、文字を打つ手も震えているのでろくに文字を打てたもんじゃない。なんとか『今から少しだけ話さない?』と打つことが出来たので、遂に送信する時が来た。

 送信した。やっと送信することが出来た。すぐに既読が着く訳がないので少し待つことにした。

 この待っている時間がドキドキする。ちゃんと返ってくるだろうか、嫌と思ってないだろうかなど色々思ってしまうことがある。


 約二十分後、返信が来た。

 返信内容を見てみると、『うん、良いよ』と返ってきた。

 嬉しかった、とにかく嬉しかった。気になっている人と話すことができると考えると嬉しいという気持ちしか出なかった。


 取り敢えず『ありがとう!』と送っておいて、何を話そうか考えていた。

 学校のことを話しても良いのだが、やはり最初は板里君の事について聞こうと思った。


『板里君って好きな物とかある?』と送ると約三分後に返ってきた。

『そうだな〜、食べることとか好きだよ。後、運動することとかな』

『そうなんだ!食べること好きなんだ』

『うん!めっちゃ好き!部活無い日とかたまにどこか食べに行っているくらい好きなんだよね』

『私もよく食べるんだよね〜、だからよく太っちゃう、、、』

『結さんって面白いね笑 でもそういうとこ俺は良いと思う!』

『え?まじ?じゃあめっちゃ食べよ』

『いいね〜』


 こういう会話をしたのは初めての感覚がした。

 この会話をして私は少し板里君と距離が縮まった気がする。そしてまた私は質問をした。

『板里君は中学の頃どんな感じだったの?』と送ると、既読は付いてるけど返信が少し遅かった。

 既読が着いてから二分後返信が返ってきた。


『あんまり良い思い出がない気がするんだよね。これは結さんだけに言うんだけど』

 私は少し申し訳ないと思った。板里の嫌な思い出をフラッシュバックさせてしまったことに。

 私は取り敢えず『嫌なこと思い出してしまったよね。ごめんね』と送り次に何を返信すれば良いか分からなくなった。

 そう自分がしたことに困っていると、板里君からメッセージが来た。


『ううん、大丈夫。』

『もし良かったらその話を聞いてほしいんだけど良いかな?』

 私は板里君のことは色々と知っておきたいと思って、『うん、ぜひ聞かせてほしい』と返信した。


 板里君の話によると、中学の頃いじめがあり、その時自分はただの傍観者になっていて何も出来なかったらしい。結局その人は転校して今どうなっているかは分からないらしい。名前を覚えていない理由はその何週間後に事故にあって、記憶の一部が消えたらしい、大まかなことは覚えているらしいが詳しいことはもう覚えていないらしい。

 その後、誰がいじめられていたのか高校に入ると誰も教えてくれなくなったらしい。

 たまに夢でそのことが出てくるらしい。


 私はその話を聞いて泣いていた。

 板里君のことをただ知りたいと思っていただけなのにまるで自分の事のかのように泣いていた。

『そうだったんだ話してくれてありがとうね』と送り、もうかれこれ一時間話していたのでお互いに『おやすみ』とだけ送り、会話は終わった。


 今回の会話はすごく楽しかった。板里君の色んな事が知れて良かった。

 私はスマホを閉じ、電気を消して、目を閉じ明日を待っていた。


 どうか夢で会えますように―――

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