懐かしく思うこと 2023/10/30

我はかつて人間どもに恐怖をもたらした大妖怪である。

しかし人間どもに遅れを取り、封印されてしまい、名も奪われた。

しかし、長い時間を経ては強力な封印も綻ぶもの

その綻びを突き封印を破ったのだ

四百年ぶりに肌に触れる空気に、懐かしさを覚える


我を封印した罪を贖ってもらうとしよう

だが力はまだ完全には取り戻せてない

まずは情報収集だ

人里に降りねばなるまい



街に出ると、見知らぬ建物がたくさん建っており、かなりの時間が経っているのが嫌でもわかった。

人通りが多いことに驚くが、色々な見たこともない飾りつけがしてある様子を見るに、祭りのようである

少し歩いてみると、違和感に気づく。

妙なことに人間は見当たらず、妖怪ばかり歩いている

見たことない妖怪もいるが、恐らく外国の奴らなのであろう

しばらく歩いても人間の気配が感じられない

恐らく人間は絶滅したのだ


何故かさみしくなった。

人間どもは、はっきり言って嫌いである。

しかしこの虚しさはなんだ。


もしかしたら、我は人間と戰う時間が好きだったのだろうか。

技と技を競い合い、お互いの優劣を決める

そんな時間は来ないのだ。

まさか、あの頃を懐かしく思う日が来ようとは。


懐かしく思うことは無しにしよう

気持ちを新たに切り替え、情報収集に努める

考えるのはそれからだ。

まずはこの祭、何という祭りなのか

近くにいた、特徴的な角の鬼に話しかける。

すると鬼は不思議そうに答えた。

「知らないなんて珍しいですね。ハロウィンっていうイベントですよ。人間がお化けとかに変装して楽しむんです。ほら、この角取れるでしょ」






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