過ぎた日を思う 2023/10/06

やっぱりあの時はああすればよかった。

国を統べる王とはいえ、そう思うことはいくつもある。

たとえワシほどの賢王でさえだ。

特に今回のことは反省している。


勇者の旅立ちの日。

勇者の紋章が出たというから、送り出しをしてやったというのに、あいつ不満そうだったもんな。

10goldもやったのに。

やっぱり、不敬で処刑しとけばよかった。

魔王を倒すならばと、我慢してまった。

伝説の勇者だからと調子に乗りやがって。


娘を助けて戻ってきたときも、仲良く手を繋いだりしてた。

娘がどうしてもと言うから、処刑はなしにして、鞭打ちですませてやった。

寛大な措置に感謝するどころか、睨みつけてきやがった。

あの顔を怖がって、娘が部屋から出てこなくなったしな。

今思い出しても腹が立つ。


そういえば、あいつがいて良かったこともあったな。

伝説の勇者の武具を探し出したのは褒めてやりたい。

おかげでわしの自慢のコレクションが充実した。

後世の人間はワシを称えるだろう。


だがヤツは勇者魔王連合とか、ふざけたことをして、城を攻撃してきた。

この美しい城に傷をつけるなど万死に値する行為だ。

挙句の果てに民衆を脅し、軍をたぶらかして引き込んだことも許せん。

それらは王の所有物だと言うのに、かすめ取るとは。


ふむ、色々考えてみたがむしろワシのほうが迷惑している。

ワシを悪者呼ばわりするが、むしろ被害者である。


そういうわけで、ワシは無罪であり被害者であり、ワシを処刑することは国の損失である。

この処刑は即刻中止にせよ。

今なら誰にも罪を問わぬ。

いやワシが悪かった。

だから処刑を中止にー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る