真実は
拝島の消息が知れたのは、それから二週間経ってからだった。
「近くの河川敷の藪で死体が見つかったらしいよ。流れてきたみたいで、川上の橋から飛び降りたんじゃないかって……逃げるのを諦めたのかな」
そう教えてくれた由奈は、右腕にギプスをはめていた。
「……ごめん」
「いや、気にすんな。それより怪我は?」
「見ての通り……当分任務にはつけないかな」
あの時、由奈を一人にしなければ。
団長から呼び出しがなければ。
……言い出したらキリが無い。
そう思うしかない。
「ゴールはできなかったようだね?」
表情が沈んでいるよ?と言う団長が突然、深矢の視界に現れた。口角を自分の手で上げ、変な顔をしている。
笑えとでも言いたいのだろうか。
開店準備中の深矢はテーブルを拭く手を止め、団長に笑い返してみた。苦笑いになった。
感情を表に出したつもりはないが、どうしても表れてしまうのだろう。
それほどの喪失感なのだ。
「一昨日発見された死体、顎の骨にヒビが入っていたのは感心できないなぁ」
「団長は何でも知っているんですね」
ひょっとして、三年前の事件の真犯人も知っているのではないか——そんなことを思ったが、聞くのはやめた。
どうせ教えてはくれないのだ。
団長は深矢の様子を図るようにしてから、人差し指をピンと立てた。
「さて、唯一の手掛かりを失ったようだけれど、もうあの事件を追うのはやめるのかい?」
「まさか」
思わず鼻で笑い飛ばしていた。
「……これくらいの絶望じゃ俺は折れませんよ」
居場所も仲間も失った、三年前のあの絶望に比べれば。
手掛かりを一つ失っただけのことだ。
「そりゃあよかった!」
パン、と団長が手を打った。
「君は『知るべき』人間だからね、うん。君の覚悟に嘘はないようで安心したよ」
「……その、『知るべき』ってどういう」
「あぁそうだ!」
わざとらしく胸を撫で下ろしていた団長は深矢の疑問を遮った。
「そういえば、『知るべきでない』子が訪ねてきたよ」
首を傾げる深矢に、団長は含み笑いを見せた。
「君と話がしたいそうだよ……お兄ちゃんのことで」
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