第4話 魔女とその一味の放課後

 私の周りには、なぜか注目されている人が集まる…てか、むしろ私も注目されている内に入るのか…?解せぬ。


 「激昂の魔女…w」

糸くんがぶっと吹き出す。朗も、犬もとい狼耳がプルプルしている。ちょっと!笑ってるのバレてますよ!

「字が!違う!」

てか誰だ、上手いこと言ったのは!

新聞部のWeb掲示板に、昼休みの内輪な騒ぎが取り上げられていたらしく、なにやら私に対して向けられる興味に若干、(笑)的なものを感じたのはこのせいか!

憤慨する私を祈雨が宥めてくれる。が、九重は面白そうにニヤニヤしている。

 今は放課後。私達は五人で寮に向かっている。クロ先生の呼び出しだ。

だいたい、このメンツは目立ちすぎる。私は改めて彼らを見た。学園の「姫」こと九重、そして「王子様」こと祈雨。更に、色んな意味でスペシャルな朗と糸くん。…バックには学園長。

何だこの集団。すれ違う人は一様に振り返っていく。向かう先は学園内の私有地、噂の『月の寮』。

程なく寮に到着。今朝ぶりなのにひどく懐かしい気がする。

きっと鉤月さんが待ってくれている。中に入ったらとりあえずお茶を淹れてもらおう。そう思いながらドアが開くのを待つ。しかし、

「ん?」

何故かドアの前でもたつく朗。糸くんが加勢するも…

「…あれ?」

「どしたの?」

「開かない。」

「え?鉤月さん、居ないのかな?」

出掛けてるとか。

私が言うと、二人は秒速で否定した。

「アイツが出掛けてるとかは無い。絶対居るはず。」

「えぇ?じゃあ、寝てるのかな?」

何となく、ドアに触れた。その瞬間、バチッと静電気に似た痛みが走る。

「!」

すると、ドアが少し歪んだ気がした。それを見ていた糸くんが声を上げる。

「そうか!由依ちゃんが来たからか!」

「…あぁ、なるほど。」

朗が納得するが、当の本人は置いてけぼりですよ?祈雨、九重と顔を見合わせる。

私のせい?

「由依ちゃん、マスターキーだ!持ってるだろ?」

「あ!うん…」

持ってる…けど。消えたし、出せるのか?

私は、輪郭の歪んだドアの前に立った。

「大丈夫、由依ちゃんが『家に帰ってきた』時と同じ様にするんだ。」

そう言うと糸くんは、他の人達と一緒に一歩下がる。私はみんなを横目に、掌をグパグパしてみる。

「鍵…この手に消えたあの金色の鍵…出てこい!」

しーん。

「……あぁ、もう!」

恥ずかしくて勢い任せにドアノブを掴む。まだ、鍵は掛かったままの硬い感触。

私の中にあるんだから感じ取れ!私自身が鍵なの!

「ご主人様のお帰りよっ」

すると、私を中心にザワリと空気が動いて、ドアの輪郭が落ち着き、外観が少し変わった。

「『ただいま』!」

『カチン』と開錠の音。ドアを引くと、ギィとか古そうな音を立てて開いた。

一歩、玄関に足を踏み入れる。…別に、朝と何ら変わりないみたいだけど…

「?」

続いて他の四人も中にはいってきた。私は一足先にリビングに上がって、ソファに鞄を投げた。

あれ?なんか妙に静かな…

「鉤月さん?」

玄関にもリビングにも姿が見えない。

その時、階上から軽快な物音と猫の情けない鳴き声が。

「ぷにゃ~〜〜」

階段を転がり落ちるように駆けてきた猫は、まっしぐらに私に向かってきた。

「え、えぇ?」

あれ?この毛色と猫耳に見覚えが…

電光石火で猫が私に飛びつく。しかし、私が感じたのは、モフっとした猫毛の感触ではなく、もっとスベスベした人肌の感じだった。

飛びつかれた勢いで、もろとも後ろに倒れたが、倒れる寸前で抱き留められた。

「マスター!大丈夫ですか?!」

「やっぱり鉤月さんか…」

「良かった…『おかえりなさい』」

強く抱き締められた。

「ちょっと鉤月!由依から離れなさいよ!」

「…九重ぇ?」

バチバチと二人の間に火花が弾けた。

「とりあえず、アンタはソイツを放せ。」

「そうそう、独り占め禁止〜」

朗と糸くんが鉤月さんを引っ剥がした。それを見ていた祈雨がしみじみと呟く。

「由依、人気者だね。」

…解せぬ。


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