第21話 決定権は私にあるんだけど?
「もちろん、お姉ちゃんを想ってる凛久くんなら来てくれるよね?」
俺の顔色を伺いながら言う愛。
なんだこの、究極じゃないけど究極の2択。
恋が心配だからお見舞いに行きたいのは山々だが、愛というとてつもない障害がある。
どうあがいても、それだけは免れられない。
上手く回避できればいいが、更衣室の時のようなことが起きれば、正直、自信はない。
「行くけど……すぐ帰るからな俺は」
あくまで恋の顔を見に行くだけ。すぐ帰るつもりで行くが、愛ちゃんが何もしてこないようなら、そのまま夜まで看病してあげよう。
ご飯を作ってあげたり、寝る時に手を握ってあげたり、背中を拭いてあげたり、俺にできることは山ほどある。
それに、風邪の時は誰だって心細いものだ。できれば近くに居てあげたい。
「結局来てくれるところが凛久くんの良いところだよね~」
「お前のために行くんじゃない。俺は恋のために行くんだ」
「そんなの分かってるよ? けど私にもかまってくれていいんだよ?」
「断わる。俺は恋の部屋から出ないからな」
「出なくてもいいけど、お姉ちゃん、寝ると起きないタイプの人だから無法地帯になるよ?」
「まず恋の部屋にお前を居れない」
「それは酷くない~? ていうか家主は私なんだし、決定権は私にあると思うんだけど」
「……なんも言えないそれに関しては」
「でしょ?」
家主には逆らえないが、抗うことはできる。
それか、強引に内側からドアを塞いで物理的に愛を部屋に入れなくする。
これが一番手っ取り早いかもしれない。
「とりあえず、放課後すぐ家に行くから。それでいいか?」
「え、一緒に家まで行ってくれないの?」
「誰が行くか」
何、一緒に行く前提で話してるんだよ。それに「え? もちろん一緒に行ってくれるよね?」みたいな顔は。
もし恋と顔が似てなくて、さらに可愛くなかった場合、その顔面に拳を振り下ろしてたぞ。
「ま、どうせ家でゆっくりできるしね」
何かを企むような笑みを浮かべると、「じゃね」と、教室に戻っていく。
一緒に行くのくらい、どうせ目的地が同じだからよかったのだが、周りの視線が痛いから断った。
彼女の妹と仲良さそうに歩いてたら変な誤解をされる。今でさえもう誤解を生んでる可能性の方が高いというのに。これ以上悩みの種を増やしたくない。
「放課後、あいつを拘束する用に手錠でも買ってくか」
今日使わなかったとしても、どうやって使うかは言わないでおくが恋とも使えるし、買っておいて損はないだろう。
そう呟きながら、俺も教室に戻るのであった。
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