第19話 盗撮

「……」


 その言葉を聞いた刹那、俺は膝から崩れ落ちる。

 あ……人生終わった。恋と築きあげてきた関係も、俺の過ちですべてが終了。

 そして同時に俺の花の高校生活も同時に終了だ。


 学校に噂が流れ、俺はゴミ人間呼ばわり。これから誰かの横を通るたびに「ゲス」などと小声で言われる。


 ……もう、何も考えたくない。


 ショックで意識が朦朧としている俺に、


「……なんちゃって」


 深刻そうな顔から一遍、けろっと小悪魔に微笑みながら言う。


「……はぇ?」


 その変わりそうに、俺もアホな声が出る。


「嘘だよ嘘~! からかっただけだって~! そんな顔面蒼白しなくてもお姉ちゃんは過去一寝込んでるだけだから~」


「風邪……?」


「なんか昨日の夜から本格的にダウンしちゃって、今も布団で寝てると思うよ」


「俺に連絡を返してないのは……?」


「ぐったりしててスマホを持てる状態じゃないよ、お姉ちゃん」


「は、はぁ……」


 顔面蒼白している俺の背中をケラケラと笑いながら叩く愛ちゃん。

 冗談にしてはキツすぎる。あの少しネタバラシが遅れていたら俺は過呼吸で倒れてるところだった。


 でも、冗談なら……そう思いながらホッとため息を付くと、


「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろ。ぶっ殺されたいのかお前」


 愛ちゃんの耳元でトーンの低い声で言う。


「まさか凛久くんがこんな驚くとは思ってなかった」


「驚くも何も、絶望するだろあんなこと言われたら」


「どうもすみませんでした」


 ペコリと愛ちゃんは頭を下げる。


「恋は寝込んでる。それを俺に伝えに来たんだろ?」


 これ以上怒っても仕方がないので、俺は話を本題に戻す。


「あ、うん。そうだけど」


「体調心配だな……今日お見舞い行ってあげようかな」


「来て来て~。おもてなししてあげるから」


「いや、やっぱ行くのやめよ」


 恋の家に行くということは、錦木家に行く。となると必然的に愛ちゃんも家に居るということだ。


 そして、恋は熱で寝込んでるだろうし、愛ちゃんと2人きりになる可能性が高い。

 更衣室でさえ、あそこまでなったんだ。家となると本当に何されるか分からない。


「お姉ちゃんも来てほしいと思うんだけどな私。彼氏がお見舞い来てくれるとか普通にうれしいと思うよ?」


「そうだけどさ……」


「まぁ、来てくれないなら、この動画学校中にまき散らしてもいい?」


 愛ちゃんはスマホを取り出すと、とある動画を見せてくる。


「おま……つけてきてたのかよ!」


「あんな面白いの逆についていかないわけないじゃん~」


 スマホに写るのは、俺と恋がラブホに入っていく後ろ姿。しっかりと顔まで写っていた。

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