第17話 あり得る展開


「おい、この一週間でそんな面白いことがあったのかよ」


 週明けの学校で、俺の机に頬杖を突きながら、唖然して言う一人の男子生徒。


「面白くねーよ。どう考えても修羅場だろうが」


 はぁ、と俺は大きくため息をつく。


 目の前にいるのは、唯井真人(ただいまひと)。同じクラスの友達だ。

 俺と同じく彼女持ちの境遇。

 こんな話をできるのは、こいつくらいしかいない。


 誰かに共有しなかったら俺が持たない。一人で抱えるのには深刻な問題すぎる。


「美人双子姉妹と体の関係を持つ……俺としては夢のシチュエーションだと思うんだけどな」


「当事者じゃないから言えるんだろそうゆうのは」


「いや? 俺はもし凛久と同じ立場だったとしても同じことを言うぞ」


「うん、倫理観がおかしい」


 まだ、ただ単に2人と関係を持ったならよかった。しかし1人は彼女という属性持ち。

 バレたらおしまいというのに、真人はこれをいいと思えるのか謎だ。


「俺にはそんな展開ありえないからいいけどな」


 安全地帯から俺に言ってくる真人。


「ゆかりは弟が一人だっけ?」


「そう、だから安全」


 安斎ゆかり(あんざいゆかり)は、真人の彼女の名前。

 恋や愛ちゃんのように、学校で有名な美少女と言われているわけではないが、密かに人気がある女子だ。


「でも分らんぞ? お前がその弟に襲われる展開だってあるかもしれない」


「それは流石にないだろ」


「世の中なにかあるか分からないからな。油断はできない」


 BL兄ショタという超コアなファンにはウケそうな内容だが、ないわけではない。


「あとはそうだな。ゆかりが弟と関係を持ってるとかはワンチャンあり得る」


「うわ、その本当にありそうなこと言うのやめろよ」


 これに関してありそう。


 姉が弟を襲ったり、弟が姉に欲情したりと、そういう系統のエロ漫画なんて世にありふれている。


「同じ学校じゃないだけマシだよお前は」


「凛久は同じ学校で、しかも双子だから学年も一緒。挙句の果てに恋とは同じクラスで愛とは隣のクラスだったもんな」


「双子で有名になったのもつい最近だしな……」


 普通、美少女の双子が学校にいるなら入学当時から有名なはずだ。

 当然、俺の耳にも入ってくるし、愛ちゃんの存在も知っている。


 しかし、俺は愛ちゃんと出会うまで双子の妹が同じ学校に居るなんて知らなかった。

 それもそのはず、愛ちゃんは俺と関係を持つまで、ほぼ学校に来ていない。理由は知らないが、


 いわゆる不登校というやつだ。

 双子の妹がいるとは恋から聞いていたが、まさか同じ学校で隣のクラスなんて、俺は知る由もなかったのだ。


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