第8話 双子パワー

「んん~、どうしようかなぁ~」


「恋はどんなのを選んでくれるのかな~?」


「これがいいんじゃない?」


「「え?」」


 突然、後ろから声が聞こえ、俺たちは声を合わせえて後ろを振り返る。


「2人を見つけたから声掛けちゃった」


 そうお茶目に舌を出しながら言うのは、今日一番会いたくなかった人物である愛ちゃんであった。


「愛~! ホントにここにいたんだぁ~!」


「見つかったか……」


「私もこの古着屋気になって入ったら偶然2人が居てさ~」


「双子パワーすごい!」


「偶然ねぇ~……」


 絶対にどこからかついて来てたな。

 顔が偶然じゃない顔をしている。絶対に企んでいる顔をしているぞこれ。


「凛久くんは久しぶりだね。私のこと覚えてる?」


 まるで親しくないような迫真の演技で聞いてくる愛ちゃん。


「覚えてるよ……すごく」


 忘れるわけないだろ。記憶を消したいのは山々だけど、現実はそう都合よく動いてはくれない。


「はぁよかったぁ~! 忘れられてるかと思ったよ~」


「凛久くんが忘れるわけないでしょ? 彼女の妹だよ?」


「忘れるかもじゃん?」


「こんなに私と似てるんだから凛久くんは忘れないって~」


「まぁ、見間違えられたくらいだからそうかもね!」


「そうだよ! 私たちは瓜二つなんだから」


「「ね~!」」


 恋と愛ちゃんは、息ぴったりに顔を合わせる。

 いかにも双子らしいやり取りだな。しかも仲がいい。


「ホント、こう並んで見るとマジでドッペルゲンガーだな」


 2人の顔をまじまじと見る。

 服装は、恋が清楚系、愛ちゃんがサブカル系と違うものの、それ以外はまるっきり同じ。


 胸の主張は愛ちゃんの方が強いが……そこは今はいいとしよう。

 身長も、仕草も、顔のパーツもすべてが同じ。怖いくらい同じだ。


「だって双子だもん」


「お姉ちゃんの方がおっぱいは小さいけどね~」


「ちょっ! ……凛久くんがいるところでそうゆうこと言わないの~!」


 なんとも触れずらい内容を口にする愛ちゃん。

 どちらの体も経験してるからこそ、俺はどういう反応をしていいか分からない。

 マジで反応に困る。


 愛ちゃんは恋にバレないようにニヤニヤとこちらを見てくるし……最悪だ。


「それで? お姉ちゃんは今凛久くんに服を選んであげてたの?」


 恋の手に持っている服を見ながら言う愛ちゃん。


「そうなの~。でも凛久くんなんでも似合いそうだから迷ちゃってて~」


「相変わらず凛久くんのことが好きだね、お姉ちゃんは」


「もちろん大好きだよ!」


 なんか罪悪感がすごい。故意ではなかったにしても、こんなにも俺を好きで居てくれる人を裏切るような行為をしてしまったことに心が痛い。


 それに、愛ちゃんが今それを恋に聞くのに悪意を感じる。

 俺の心をこれ以上えぐるなよ……愛ちゃん。

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