第7話 どれも似合いそう
待ち合わせをした駅前から少し歩くと、大型ショッピングモールが目の前に現れる。
休日、どこかへ遊びに行こうとすると大体ここに来るほど、俺たちが通う高校の生徒にはお馴染みの場所だ。
ショッピングモールの中にはアパレルショップや雑貨屋などは何十店舗も入っており、映画館、スポーツ施設まで完備。
一日中居ても飽きない大規模なショッピングモールだ。
ここなら愛ちゃん居ても会わない可能性が高い。休日ということもあってか場内は大盛況。
この人込みの中で俺たちを探す方が難しいだろう。
「今年の冬は古着に挑戦してみたいんだよね~」
手を繋ぎながらお店をフラフラとしていると、古着屋の前で足を止める恋。
「似合いそう」
「清楚系は最近ウケが悪いって聞くから、古着にチャレンジしてみようかなーって」
「俺は清楚も好きだぞ? 今の服だってかわいいし」
白のプルオーバーニットにグリーンのレーススカート。頭にちょこんと被る黒のレザーキャスケットがいいアクセントになっている。
「凛久くんは可愛いって思うかもしれないけど、周りの目が気になるの!」
「可愛すぎて視線集めちゃうからか?」
「……違う!」
少し顔を赤らめながらも否定する恋。
俺はこのままの清楚系の服でも十分似合ってると思うし可愛いと思うが、古着へと系統を変えた恋も見てみたい。
モデルがいいから、恋はなんでも似合う。
「ほら、そこのお店入ろ!」
プクリと頬を膨らませた恋は、俺の手を引っ張ると、古着屋へ連れ込む。
店内は、ビンテージ品から、アウトレット品まで様々な種類の古着が置いてあり、客層もショッピングモール内にあるからか、同年代から親世代まで幅広い。
「さぁ、いい服を発掘するぞ~!」
と、小さくガッツポーズをして意気込む恋。
「この量の中から果たして運命の出会いはできるのか」
「できる! 私ならやれる!」
「俺もいい服あったら買うか」
「私が選ぶ、てか選びたい」
「お互い選びあいもしようなそしたら」
「よし、めっちゃ気合入ってきた」
やる気に満ち溢れてるな。
「さてどこから見ようか」
店内を見渡し、どこから探ろうか考える俺。
冬服となると、パーカーとか見るのが無難か。そして、そこに合うジャケットを決める。
パンツはオーバーサイズのジーンズ。恋はダボっとしたコーディネートが似合いそうだ。
ラックに掛かっているパーカーを一着づつ丁寧に見る。
自分のも含め、気になるものを何着か手に取ると、次はジャケットのコーナーへと移る。
パーカーの色に合うものをこれも数着選ぶ。
「恋―。色々選んだけど着てみるか?」
近くで服と睨めっこしている恋に話かける。
「ぐぬぬ……どれも凛久くん似合いそうで決められない……」
「そんなに悩まなくても」
「で、でも……どれも似合いそうで……」
「直感で決めなよ……」
喉を唸らせて服を凝視している恋に、俺は苦笑する。
服にそこまで顔をしかめて悩むものなのか? いやまぁ悩んでる恋が可愛いから一生見てられるけど。
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