第6話 デート
「凛久くんおまたせ~!」
「それじゃ、行こっか」
数日して、俺と俺の正式な恋人である恋はデートをしていた。
あの日の夜、いつ恋から怒りの連絡が来るかとおびえていたが、そんなに心配する必要もなかった。
ホテルの件から今まで、特に愛ちゃんから連絡が来ることはなく一安心。
今日のデートも順調に行きそうだ。
「今日、レストラン予約してくれてるんだよね?」
「たまには良いところでも行こうかなと思って」
「凛久くんなんかいいことでもあったの? 奢ってくれるなんて羽振りがいい」
「いいことではないけど~、まぁ色々あったな」
どっちかというと悪いことだ。だって、恋の双子の妹をホテルに連れ込んでしまったんだから。
申し訳ないことをしたからこそ、今日はちょっと高めのレストランを予約してある。
恋が言った通り、俺の奢りで。
「今日さ、妹にレストランのこと言ったらさ~、妹もここの近くで遊ぶからワンチャン会うかも~て騒いでたんだよ」
「へ、へぇ~」
「なんか凛久くんに会いたい~って言ってたなぁ」
「なんで俺に会いたいんだろうね~」
「この前一回会ったからじゃない? 私からもよく話聞いてるし気になってるとか!」
「そ、そうなんだ……」
俺は声を少し裏返しながら言う。
愛ちゃんに偶然会ったことは、愛ちゃん経由で伝えてある。
しかし、ただ会って少し立ち話をした程度ということになっている。
恋に『今日妹に会ったって本当?』と電話で聞かれたときは心臓が飛び出そうになったがな。
「今日、偶然会っちゃったりしてね」
クスクスと笑う恋。
俺からしたら笑いごとではない。時限爆弾みたいなものが目の前に現れるんだ。恐怖で仕方ない。
ただでさえ毎日愛ちゃんが口を滑らせてあのことを言ってないか心配なのに、今日偶然出会ってしまって、目の前で変に話を振られたら積みだ。
「とりあえず、予約した時間までまだるし、服でも見る?」
「賛成~! 冬に備えて服欲しかったんだよねぇ~」
「一緒に可愛いの見つけような」
「うん! 私も凛久くんに似合う服選んであげるね」
「任せた」
楽しいデートのはずなのに、愛ちゃんが近くにいるということを考えるだけで肩が竦む。
……いや、考えないことにしよう。今日は恋とのデートなんだ。他の人のことなんて考えない。
純粋にデートを堪能しよう。
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