第5話 連絡先

「凛久くんはさ、エッチが上手いの好きじゃないの?」


「上手いに越したことはないけど……それで人を判断したりしない」


「じゃぁ、私とお姉ちゃんだったらどっちがいい?」


「それは、もちろん恋だな」


「エッチ下手なのに?」


「……それも含めて可愛いだろ」


 初心な女子は可愛い。


 恋は、俺が初体験だったらしく、それはもう服を脱いだ時から終始顔が真っ赤で、それがまた可愛いかった。


「もしかして、下手な人の方が興奮する変態さんだったり?」


「んなわけないだろ」


 クスクスと笑いながら言う愛ちゃんに、俺は真顔になる。


「なら絶対お姉ちゃんより私の方がいいじゃないですか~」


「俺は誰とでもホテルに入る人より、経験が0の人を選ぶよ」


 処女とビッチを天秤にかけると、圧倒的に処女に傾く。もちろんビッチの方が好きという人もいるかもしれないが、俺は違う。


 これで処女厨とか言われたら溜まったもんじゃない。


「大前提だな。俺は恋と付き合ってるんだ。他の誰にも目移りなんてしない」


「え? さっき私とホテルに入ったのはどこの誰ですか? しかもその人から誘ってきたんですけど?」


「……あれは人生最大の勘違いだ」


 小首を傾げながら小芝居をする愛ちゃんに、俺は引き攣った顔を浮かべる。

 服装は違えども、顔と声はまるっきり同じ。

 仕草や表情も、恋とそっくりそのまま。

 ホテルに入るのもためらわないとか、普通に騙されるだろ。


 まぁ行為中、違和感を覚えるくらい上手かったが、いいムードの時に「恋だよね?」

 とか言えたもんじゃない。


「ま、この件はお姉ちゃんには黙っててあげてもいいよ? 条件付きだけど」


「条件ってなんだ……」


 これでもし、定期的に呼び出されて性処理に使われる展開になったら、どこのエロ漫画だって話だ。姉と恋人で妹とセフレとか本当にのエロ漫画にありそう。

 もちろんジャンルは逆NTR。


「連絡先、交換しよ?」


 おっとこれは想定していたエロ漫画展開になりそうな要求だな。


「なんで連絡先」


「まぁ? お姉ちゃんの彼氏ということで何かと連絡先を持ってた方が安心かと思って。お姉ちゃんに何かあった時に連絡手段がなかったら困るでしょ?」


「……確かに」


「あとは、私が個人的に連絡を取りたいからかな」


「お前は連絡するな」


「しないであげてもいいけど、お姉ちゃんのエッチなコスプレ写真とか撮ったとしても送らないよ?」


「どうぞご自由連絡してください」


 別に恋のエッチなコスプレが見たいから交換するわけではない。あくまで恋人の妹だからだ。


 もし、個人的な連絡が愛ちゃんから来ても、適当に流していればいい話。

 いい写真がもらえるのなら、ある程度会話してあげても……って、この話はやめよう。これじゃ俺の脳がチンコで出来てると思われる。


 こうして、俺の連絡先は愛ちゃんのスマホ登録された。



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