第3話 顔がタイプだったから
「一回確認ね。本当に俺の事知らないの?」
焦って早口で聞く俺。
それに対して、愛ちゃんは、
「うん、初対面だよ?」
と、ポカンとした表情で答える。
「じゃぁ、なんで俺とホテル入ったの? 普通断るでしょ」
これが一番の謎だ。
誰かも知らない人からいきなりホテルに誘われたら断るだろ。不審者だと思われて通報だってされかねなかった。
なのに、愛ちゃんは拒もうとせず流されるようにホテルに入った。
しかもちゃんと行為を楽しんでいたし。
「いや、顔がタイプだったからさ」
「いくら顔がタイプだからって、あっさりついて行きすぎじゃない⁉」
真顔で言う愛ちゃんに、俺は目を見開く。
兄弟姉妹などは、よく趣味思考が似るとは言うが……嫌な場所が似てしまったな。
「まあ暇だったし、お兄さんカッコよかったからいいかなーって」
「だとしても、初手ホテルは……カフェだったらまだ許容範囲だとは思うけど……」
「でもホテル誘ってきたのはお兄さんだよね?」
「……はい」
クソ、俺がもっと理性を保ってカフェとか誘っておけばよかった。
そうしたらこんなことにはならなかったのに……マジで何してんだ俺。
「それで? 結局お兄さんは何者なの? お姉ちゃんの名前知ってるってことはお姉ちゃんの知り合いって事は見当つくけど」
腕を組み、豊満な胸を強調させながら言う。
……いつかバレるんだったら今言った方がいいのではないか?
どっちにしろ修羅場は回避できないし、これは潔く言った方が吉な気もする。
「ホテル行く関係ってことは、お姉ちゃんの彼氏? それともセフレ?」
「セフレが初手で出てくるのはおかしくないか?」
姉の尊厳どうなってんだよ。
「でも、お姉ちゃんシたことあるの1人って言ってたからセフレはないか」
「そ、そうなんだ……てか恋とそんな会話してるんだな……」
「いつも相談には乗ってあげてるよ? 姉妹だし」
「……左様で」
「ちょっと話逸らされてるんだけど! 結局お兄さんはお姉ちゃんの彼氏なわけ?」
グーンと背伸びをしながら顔を近づけくる愛ちゃん。
どっちにしろもう逃げ場はない。言うしかない。
「はい……恋の彼氏の凛久です」
俯き、申し訳なさそうに言う。
「……じゃぁ、私。お姉ちゃんの彼氏と浮気したってことになるよね」
「……そうです」
「うわ、修羅場過ぎる」
「何も言い返せないです」
口元を抑えながら眉をひそめる愛ちゃん。
本当にごめんなさい俺がすべての原因です。いくら顔が似ていたとしても間違えた俺の責任です。
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