第2話 あなたと初対面だったから

「いや~、よかったね」


「う……うん」


3時間後、余韻が残るまま俺と恋はホテルを後にしてすっかり日が暮れた夜道を歩いていた。


退屈だった休日がいっきに最高の休日になった。

久しぶりに恋としたからか、なんだか新鮮な気持ちだった。

余韻が夜風に当たってなんとも気持ちがいい。


「そうえばさ~」


「……ん?」


だがしかし、一つ俺には疑問な事があった。


「なんで今日やけに恥ずかしがってたの? ホテル行く前もそうだったし、服脱いだ時もいつもより恥ずかしがってたような気がしたんだけど」


普段だったら、自分から服を脱がせてきたり積極的な恋であったが、今日はやけに奥手だった。


「え、そんな事言われても……」


「ん? なんかあったの?」


「だって、あなたと初対面だったから」


「え? 初対面? どうゆこと?」


頬をじんわりと染めながら言う恋に、俺は聞き返す。


「私、あなたと会ったの初めてだし、緊張するのはしょうがなくない?」


「しょ、初対面?」


恋の言葉に、俺は大きく首を傾げる。

俺と恋が初対面? 全く意味が分からない。だって付き合ってるんだぞ?

からかわれてるんだろうけど、恋の表情からして本気で言っているような気もする。


「うん、あなたと今日初めて会ったわ」


「ちょっと待って、俺の事からかってる?」


「からかってるわけないじゃん、友達でもないんだし」


いたって平然な顔でいう恋に、さらに困惑する俺。


「友達……というより恋人だけども俺達は」


「恋人?」


と、恋は小首を傾げる。


「だって、恋は俺の彼女じゃん」


「ん? 恋? 私は愛だけど」


「愛? 愛って誰のことだ?」


「私の名前だって」


「じゃぁ、恋は?」


「恋は私の双子のお姉ちゃんなんだけど」


「お、お姉ちゃん⁉」


目を見開き声を張る俺。

どうゆことだ⁉ 今、俺の目の前にいるのは恋ではなくて、恋の双子の妹の愛ちゃんってことか?


そうえば前言ってたな、双子の妹がいるって。それも凄く似てて家族くらいしか見分けがつかないって。


マズい……非常にマズいぞこれ……

俺、彼女と勘違いして双子の妹に手出しちゃたのか……

だから、今日はいつもと違う雰囲気だったし、あんなに恥ずかしがってたのか……


「うん、ていうかお兄さんは何者なの?」


恋の名前出したからか、愛ちゃんは疑いの眼差しを向けてくる。

どうしよう……これは正直に言うべきなのか?

俺は君の姉の恋の彼氏だって。


いやいや、言ったら修羅場に違いない。てか色々とマズい状況になる。

妹の愛ちゃんは俺の事を知らないわけだし、これは俺と恋の関係性を黙って置いてた方が良さそうだな。


それに、いくら似ていても、彼女と勘違いして双子の妹に手を出したとか……普通に最低だ。



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