第2話 再発にチェーンロック見つめたる 過去の締め出し深き雪の夜
再発に チェーンロック 見つめたる 過去の締め出し 深き雪の夜
もう、三十年近く前のこと。
夜間透析の業務を終えた帰路は、大雪だった。
道には降り続いた雪が積もり、車の前方はワイパーを動かしても視界が悪い。
まだ、運転免許を習得し一年経ったかどうか。
慣れない雪道の運転に心の底で泣いた片道二十五キロ。
ただ、幸運なのは他に車が走っていなかったこと。
多少滑ろうが当たる心配がないし、ゆっくりと走っても問題ない。
やっとの思いで自宅に付いたときには深夜頃。
玄関のカギを開けドアノブを引っ張ったが、カチャッと小さな音がするだけ。
繰り返したが同じことで、ドアは開かない。
隙間から覗き込むと、ご丁寧にチェーンロックが掛けられていた。
ご近所迷惑になってもいけないから音はあまり立てられない。
当時まだ私は携帯電話を持っておらず、隙間から押し殺した声で「開けて~」と、繰り返した。
諦めかけたとき階段を慌てて駆け降りる音が響いた。
あれ以来、私は無性にチェーンロックが、気になる。
再発防止のために。
※エッセイ「斎藤さんちの小噺」雪女で、書いたものを短歌にしております。
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