ep3 本物の妖精の末裔。
銀髪のエルフ。月の妖精の末裔。
御伽話でしか現れない存在。眠りの使者。
御伽話の名前は《月光のアリュリパ》だったかな。
まさか実在していようとは。
エルフは希少だ。全体で数千人もいないとされている種族。まぁ、これはあくまで人類側の予想にすぎないのだが。
とはいえ、希少なことに変わりはない。銀髪ならば特に。
「あなたが...クアンゲル?」
「そうだ。」
「本当に、尻尾や耳が生えてるんですね...」
そりゃ獣人だからな。というか、エルフに言われたくないのだが。
「エルフだって、長い耳がついてるじゃないか」
今はフードで隠れていて見えないが、エルフは耳が長い。妖精の末裔ならば、普通のエルフよりさらに長いだろう。多分。
「そういえばそうですね。わぁ、もふもふ。」
ふふふ、そうだろう。尻尾の手入れには気を使っているんだ。というか、案外フレンドリーだな。
もっとお堅いのを想像していた。あいつみたいに。
「尻尾を触るのは構わないが、どこか店に入ろう。ここは目立つ。」
「わかりました」
名も知らないエルフを連れて歩く。飲む店は...あいつのところでいいか。
「んで、またうちに来たのか」
「なんだよ、いいだろ」
「お邪魔します」
「まぁダメとは言わんが」
本日二度目のダグルの店だ。他の店も考えたが、依頼のことやら考えたらここが一番都合がいい。今日は客も少ないしな。
「んで、エルフの。私を探してたんだって?」
いきなり本題だ。私は長ったらしい話は苦手だからな。どうやら酒飲み達の話じゃ、私を探していたらしいし、なんで探してたのか知りたい。
「はい。重ねて確認しますけど。あなたがクアンゲルさん、でいいんですよね?」
「ああ。」
「何か証明できるものは持ってますか?」
「ほら」
雑嚢に入れていた冒険者証...今はプレートだっけ。それを手渡す。エルフはそれをじっと見た後、納得したのか返してきた。案外用心深いな。
「銀等級第二位...では、あなたが本当に、あの〈豪腕〉と謳われる...?」
「それはやめろ。むず痒い。」
そういえばあったな。私にも二つ名。だいぶ前に合同で依頼を受けた時に広まったんだったか。
まぁいい。
説明しておくと、私の冒険者としての等級、銀等級第二位は、なにも全ての銀等級の中で二番目、というわけではない。
これは少しややこしいのだが、銀等級第一位、第二位、第三位とあり、銀等級の証をギルドから貰った冒険者は実力、功績、あとはパーティーへの貢献度だの、いろんな点を評価され、第一位から第三位へ振り分けられる。
私は第二位の位に分けられている。銀等級第三位でベテランってとこか。
ちなみに銀等級の上には金等級。さらに上には白金等級がある。金等級は国が認めた英雄、超人の冒険者やら、はっきりいって人間を辞めてる奴らだ。白金等級は、まぁ歴代の勇者様専用の位って感じか?
あれ、少し前ソードマスターも貰ってたっけ?
まぁどうでもいいか。そんなことよりエルフの話だ。
「それで、なんで私を探してた。」
「あぁ、そうそう。実は私も冒険者でして。この街の冒険者ギルドに呼ばれたんです。あなたに力を貸して欲しいって。」
「私に?なんで」
「なんでも近々、ファント山に大物を討伐しに行くのだとか。」
「パーゲンのジジイの差金か」
「はい。それに私であれば、あなたが直面している問題も解決できます。」
「私が直面してる問題?」
そう聞き返すと、エルフはニコリと笑い、耳元で小さく囁いた。
「私は月の妖精の末裔。私がいれば、あなたは月光のもとでなくとも、思う存分力を振るえますよ」
蠱惑的な声で、まるで誘うようにそう言う。
獣人にとって、制限なく力を振るえるというのは、この上なく甘い言葉だ。それは私にとっても。
「私はアリュリパの名を継ぐ者。本物の妖精の末裔ですので。」
ファンターレンと同じ琥珀色の瞳が笑みに合わせて形を歪める。まるでイタズラが成功したかのように。
クアンゲルの一転 Gatling_1010/ @Kuroro_2040
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