第83話 ロリ王の末路
変態国王のプライベートルームでは今日も痴態が繰り広げられている、醜く腹の出た中年の周りにはまだ幼い子達、
男の子でも女の子でも成長する前が至高と言う考えの国王にとっては最高の環境、
“さぁ~て、今夜はどの子犬に乗ろうかな?”
まだ一桁の少女にのしかかる醜い中年、薄い身体の幼女が細い腕を汚い身体に伸ばす、
国王は首筋にチクリと嫌な感触、
しばらくすると脚の踏ん張りが効かなくなってカウチから滑り落ちる、
“お前達、早く助けを呼んで来い”
口をパクパクしているのだが、そんな彼を冷たく見下ろす幼子達、次第に視界が狭くなってきてついに意識が途絶えた。
控えの間の扉が開き、男が入って来る、
「お前達はすぐに下がれ、隠し通路を使って部屋に戻れ」
幼子達は訓練された兵士の様に黙って、そして機敏に動きだす、
「御典医殿、おられるか?」
白髪の医者が入室してきた、
「診断をお願いしたい」
見苦しくヨダレを垂らし、白目をむいた醜い死体を指さす、
「心の臓が止まっております」
「陛下は毎晩遅くまで執務に励んでおられたし、毎日大勢の人に会っておられた、何か関係はあるか?」
「やんごとなきお方は毎日激務に耐えておられます、おそらくその影響かと」
◇◇
翌日は国中の貴族が王宮に集まれと命令が出て、国王の崩御を伝えられた、
わたしは厳密に言えば爵位は無いし令夫人と言う訳でもないのだが、序列に組み込まれているのは飛行工房のおかげであろう。
まだ冬の社交の時期ではないので全てではないが、主だった貴族は全て集まっていた、高位の者で列席していなかったのは第一王子くらいか。
「……陛下におかれましては、時に執務が翌朝まで及ぶ日も有ったとの事で有ります、されど国体の護持を一番に考えておられる御お方は、決して疲れを見せる事無く専心職務に遂行なされあそばされました……」
侍従長の読んでいる作文、中には目頭を押さえる者もいる、わたしも貴族社会で生きて行くにはそれくらい出来ないとダメなのだろうか。
公爵家の一つファルケンシュタイン公が言う、
「こたびの件、まこと急であった、だがこの様な時こそ我々貴族が一丸となって国体を護持しなければならないと思う」
完全な正論、誰も反対の声を上げたりしないが、賛同の声も無いあたり貴族達が浮足立っている証拠だ、
「まこと、彼の者の言葉こそ我々国民の気持ち、今こそ一つになる時ぞ」
エンケルス大公が言うと、浮足立っていた貴族達の心も傾きだした。
「左様、悲しみに打ち震えるよりも大切な事は国を守ること」
とらえ様によっては前国王を下に見る様な言葉だが、今は言葉の裏を読む余裕のある貴族はいない、
「そうだ、我ら一つになる時ぞ」
どうしようか様子見だった貴族達の心に愛国心が湧いて来た頃あいを見て、エンケルス大公が言う、
「我らが国を思う気持ちはまことと分かった、これからは次に進むべきではないか?」
「左様、指導者の無い状態ではいつ何時他国に付け込まれるやもしれん」
グートシュタイン公爵が早く次の王を決めろと言った。
「今この中でもっともふさわしいのはファウルシュティッヒ殿しかおるまい」
あっという間にファウルシュッティヒこそ次期国王と言う空気が醸し出された、
貴族の序列の最上位に立つ彼に“玉座に登ってください”、“玉座こそふさわしい”、“早く登れ”と言う視線が注がれる。
玉座に昇る階段を登るファウルシュッティヒ、ほんの数段だが、彼にとっては最高峰の山よりも高く感じられた、それでも左右の脚を交互に出しながら高みを極めた、
「ここに王の即位を宣言する! これは我が国民の総意である」
これで貴族から認められた王にが誕生した。
ちなみにアルミンにいたジークムント王子に知らせが届いたのはファウルシュッティヒが玉座に座った遥か後、今更“俺が長兄だ”と言ったところで誰も聞く耳は持たない状態。
これは映画、全てはファウルシュッティヒとマグダネーラが書いた脚本通りに話が進んで行く、端役のわたしはもう出番はないだろう。
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