第47話 背広と革靴とダイハツの軽トラ

 地元中尾事務所である。

先生と大川(地元第一秘書)が応接室で話しをしている。

大川、


 「同友会(地元経済同友会)のゴルフコンペに行ったら崎田(崎田建設社長 崎田源次郎)の息子が居りましてね。なにやら金子と杉浦にベッタリですわ」


先生が、


 「アレは五木田の地盤を狙ってるんだ。五木田は問題が多すぎる。公認は取れない。ダムの件で多くの支持者を減らしてる。ダム建設に崎田が絡んでる。崎田が裏幹事だ。安藤くんが調整している。オレ達は触るな」


 向かいの衆議院第二会館。

五木田事務所(中尾と同じ選挙区)のカーテンの間から灯りが洩れている。


武智と伴が応接室のテーブルを隔(ヘダ)て、天井を見ながらモノ思いにふけっている。

武智が、


 「考えて居てもしょうがねえ」


武智がソファーを立つ。

伴は武智を見て、


 「コーヒーですか?」

 「いや、便所だ」

 「あ〜あ・・・」


武智は事務所を出て行く。

暫くして事務所に戻って来ると机の引き出しから、『名刺ファイル』を取り出す。

ファイルをめくりながら、


 「え~と、崎田、サキタ・・・お、有った!」


伴はバリスタでカップにコーヒーを注(ソソ)ぎながら武智を見ている。


 「名刺ですか?」

 「うん? ・・・うん」


武智が崎田の名刺を手に応接室に戻って来る。

ソファーに座り鼻クソをホジリながら名刺を見ている武智に、


 「どうぞ!」


伴はテーブルの上に熱いコーヒーを置く。


 「おお! なんだい。ワリ〜なー」


武智が伴の心ずかいに驚く。


 「いや~、革靴と背広、それとクルマですからね」


武智は伴を見て、


 「うん? クルマ? ・・・ダイハツの軽トラだな。・・・ちょっと待ってろ」


武智はコーヒーを一杯飲んで受話器を取る。


 「046・・・。・・・もしもし、社長いるかい?」


武智は実に横柄な態度である。

                          つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る