第22話 結束の証、過ぎゆく夜明け
静寂が支配する前の夜、如庵は約束の地で心配そうに時計を見つめていた。斗升の姿がまだ見えない。不安は隠せず、終始彼の眉間にはしわが刻まれていた。
夜が明けゆく頃、期待も不安も峠を越えたかに思えた瞬間、重い足音が耳に届く。振り返ると、斗升と共に、威厳ある伊達政宗の姿が目に飛び込んできた。斗升の身には明らかな負傷の痕があり、政宗の顔には重大な決断の重さが刻まれていた。
如庵は二人を見て立ち上がり、心配そうに問うた。「斗升、そして政宗様、一体何が?」
斗升が痛々しい声で語り始めた。「遅くなったこと、許してくれ、如庵。昨夜、帰り道に自軍による襲撃にあった。政宗様に同盟画策を監視されていたのだ。九州襲撃まで全てを話したが、信じてもらえず遅くなってしまった。」
伊達政宗が一歩前に進み出ると、厳粛な面持ちで一通の手紙を如庵に差し出した。その手紙には、朝鮮軍の脅威と共に、日本の未来に対する緊急の訴えが記されていた。政宗は言葉を継いだ。
「この手紙は、鍋島直茂の最期の言葉だ。彼はすでに九州で最後を迎えている。彼の訓戒が、我が心に火をつけた。斗升が言っていたこと、全てが真実だったのだ。」
手紙には次のように記されていた。
「政宗よ、我々は今、未曾有の危機に直面しておる。朝鮮軍は我々の想像を遥かに超える規模で、軍備も強力なり。彼らの進撃を前に、我々が争う場合ではない。今こそ、日本は一つになり、この困難を乗り越えなければならぬ。執念やプライドは捨て、豊臣の下に集い、石田を始めとする賢者たちと共に、日本の未来を切り開け。石田と共に、我々の国を守る軍師となれ。もはや、個々の名誉など考えるべき時代ではないだろう。」
手紙の言葉は、伊達政宗の決断を確固たるものにしていた。彼は如庵に向かい、深く頭を下げた。
「私は鍋島の遺志を継ぐことを決めた。如庵、斗升、共に日本の未来を守ろう。」
この言葉に応えて、如庵もまた深く頭を下げた。「政宗様、そして斗升、あなた方の決断と勇気に敬意を表する。我々は今、新たな絆で結ばれた。」
伊達政宗は手紙と共に、一つの古い木箱を如庵に渡した。それは伊達家に代々伝わる家宝、精巧な工芸で装飾された古い武具のセットだった。如庵はその箱を受け取り、重みと共に新たな絆の証として受け入れた。
三人の影が、徐々に明るくなる空に溶け合うようにそこに立っていた。九州の火はもうすぐ消え、新たな同盟の光が日本に新しい希望を灯すのだった。
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