第21話 分断された信頼

朝鮮軍の予期せぬ侵攻という衝撃的な報せを受けた斗升は、一刻も早くその情報を伊達政宗に届けるべく、夜陰に紛れて帰路を急いだ。月が雲に隠れ、辺りは一層の暗さに覆われる。足早に城を目指す斗升の胸中は焦りでいっぱいだった。だが、その急ぎ足も束の間、伊達軍の警戒による自軍の暗殺者たちに襲われるという不運が襲いかかる。


身を隠しながらも、闇に紛れた暗殺者の手により一撃を受けた斗升。服は血で濡れ、腕は深い傷を負ったが、彼の闘志は消えなかった。自衛隊時代に培った戦闘知識を駆使し、土地勘を活かしながら、追っ手を振り切り、何とか自軍の陣地へとたどり着く。


息を切らしながら、斗升は伊達政宗の前に立った。護衛たちが怪訝な顔で見守る中、斗升は咳き込みながら始めた。「政宗様、私がこれまで画策してきた両軍統一の真意をお話しします。」


伊達政宗は斗升の姿を見て、怒りと疑念が交差する複雑な眼差しで応えた。「なぜ、私に相談もなく、そのような事を…」


斗升は深々と頭を下げ、謝罪の意を示した。「不安を感じさせてしまった責任は全うに私にあります。しかし、今はそのことを議論している場合ではありません。朝鮮軍が九州に侵攻しており、我が国は大きな危機に直面しています。」


伊達政宗の眉が額に寄り、疑い深い目つきが一層鋭くなった。「九州侵攻だと? お前の言葉をどこまで信じれば良いのだ?」


斗升は、痛みを堪えながらも力強く語りかけた。「疑うのも無理はありません。しかし、今こそ私たちが団結し、共通の敵に立ち向かう時です。私のこの傷は、その現実を物語っています。」


しかし伊達政宗は決断を下さなかった。「我が軍をだまし、密かに豊臣と結びついた男の言葉に、どうして俺が耳を貸さねばならないのだ?」猜疑心は容易に払拭されるものではなかった。


斗升は立ち尽くし、伊達政宗の決意を待つしかなかった。


一方、如庵は石田三成の下で、事の次第を落ち着いて説明していた。彼の語り口は、事態の深刻さを伝えつつも、平静を保つものだった。


「三成様、時は刻一刻と過ぎております。九州での出来事は、我々の内政を揺るがすに足りる緊急事態です。」如庵の言葉は、石田三成の心に深く響いた。


三成は如庵の目をじっと見返し、真剣な表情をした。「如庵、お前の言葉は常に重い。だが、私はこの同盟を許すことが、果たして最良の策かどうか…」


「三成様、我々が今、手を取り合わなければ、九州だけでなく、日本全土が危険に晒されます。同盟はただの政略を越え、国の未来を守るための必然です。」


三成は深く頷き、如庵の提案に許可を与えた。「分かった。行け、如庵。お前の言葉を信じ、この同盟に許可を出そう。しかし、果たして伊達政宗が…」


如庵は一礼して、すぐさま行動に移るべく立ち去った。石田三成の眼差しは遠くを見つめ、未来に対する深い思索に耽っていた。


朝日が昇る頃、混沌とした情勢の中で、新たな展開への道筋が僅かながら見え始めていた。しかし、その道は険しく、両雄の心の溝は依然として深かった。

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