第6話 口の堅い子分
星と星を股に掛ける奇跡の大泥棒。その親分、リボルバー4世は子分に向かって今日の仕事の話をする。
「国立秘宝博物館にはうん十億のお宝が隠されている。今夜、それを頂戴するのさ。裏口からそっと入って、秘密のゴミ捨て通路がある。そこを知っているのは一部の人間だけだ。そこにはセキュリティー・システムもない。そのまま展示室までは無防備に進める。あとはそこで電源を切れば準備完了だ。頂いた後は、ここに隠してある小型宇宙船で、この星ともおさらばよ。いいか、くれぐれも他言無用。誰にも言うんじゃないぞ」
子分のひとり、通称、小惑星の三吉は「わかりやした」と満足げだ。
彼は子分の中でまとめ役だ。忠実で、口も堅いことで親分は信頼している。
「じゃあ、午前三時にまたここで」と言うと親分はさっ、と姿を消した。
三吉は飲み屋で時間まで暇をつぶすことにした。
同じ子分の鍵開けのピン助と電気屋の花子が同じテーブルに無言で座る。
「今日のミッションは」とピン助。
おちょこを前に三吉は沈黙を決め込んでいる。
全てを悟ったように、
「そうかお流れか」とピン助は肩をすくめてハイボールのグラスを持ったまま、その場を後にした。
「あたいの生活もあるんだ。簡単に計画を中止にしてほしくないね」と花子は少々おかんむりのようだ。
それでも三吉は沈黙を守った。
午前三時。約束の時間にふたたび元の場所に戻ってきた。
「おう誰も来ねえじゃねえか」と親分。
「はい」と、あの時以来初めて口をきく三吉。
「鍵を開けるピン助と電気に詳しい花子はどうした?」
「黙っていたので帰りました」
三吉のその言葉に親分は、
「なんで黙っていたんだ。仕事の段取りを説明するのがおまえの仕事だろう」と腑に落ちない顔である。
「だって、親分が、再三にもわたり、くれぐれも誰にも言うんじゃない、って繰り返し言っていたもんで」と悪びれたそぶりもなく返した。
そう、三吉は口も堅く、忠実な男だ。だが話術読解には少々、力及ばずな面があったのだ。
了
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