第9話 おばちゃんとランチと息子の反乱
事務所の近隣にはオシャレなお店が多いらしい。まあ都心だから。
でもおばちゃんは毎日食費節約の為に、お弁当を持参している。お弁当と言えども、朝ごはんの残りや、子供や夫のお弁当の残り、もしくはおにぎりのみ。
ご飯はいいよね。沢山炊けば如何様にも使えるので。
たまに時間があるときにパンを焼いて、前夜のシチューをジャーに入れて持参すればオシャレなランチになる。(気がする)
食事は近くに公園があるので、お天気がいい時はそこで公園の木々を楽しみながら食事をする。
意外と自分と同じように一人でお弁当食べている男女は多い。大体ルーティーンは同じなので、同じ人達と点在して食べる。
時々いないと少し心配する。
仕事はまあ順調だと思う。人間関係を覗けば。
それが一番重要なのだと思うけど。
支店長の私嫌いは収まる傾向はなく、段々と酷くなる感じがする。
黙って反論しないで聞いているから増長しているんだろうか?
最近、30代男性が一人唐突に辞めた。
最低でも2か月前に本社人事課に申請すれば問題ないので、もちろん問題はないが、周囲はびっくりした。
彼は晴れ晴れとした顔で机を片付け、慌ただしく開いた壮行会でも見た事もないくらい上機嫌で、あっさりとさよならして他社に行った。
原因は支店長のパワハラなんだろうなあと思う。
私は自分への攻撃でいっぱいいっぱいで周囲を気遣う余裕はないけど、みんな大なり小なり恫喝まがいに何かしら攻撃を受けている。
地味にそれが効いてくるので始末に負えない。
支店長世代はパワハラもモラハラと言う言葉もない世代なので、そういう事を言ってはいけない事が理解できないみたい。
そういえば、最初の支店長を見た時に、夫の義父に似ていると思った。
世代的には少しずれるが同じかもしれない。
そうでない方も多いけど、あの世代のああいう考えの方には何を言っても人格が完成しているのでまず無駄だ。
あのパワハラさえなければなあ…と、嘆息する。
夫は私の会社での話しは一切聞かない。思えば、私がここで働くようになってから、なんだか会話が少なくなくなった気がする。
単に私が疲れ果てていて、夫の帰りを待たずに寝落ちしていることが多いし、朝も会話する暇もない程、忙しいからかもしれない。
土日はあの人はゴルフや付き合いとかで家にいないしね。
息子の勉強はまあ一進一退のようだけど、私からとやかく言えることはない。頑張ってもらうしかない。
夫や義父な先輩風を吹かせて、役に立たない昔のやり方を得々と聞かせているらしい。時々息子が「古いんだよね」とため息をついている。
塾でも親世代のやり方は今は通用しないし、知識として現代では間違えていることがあるので、子供が混乱するので親は教えないようにと言われたんだけど、夫は自分より下と思う者の意見など聞かない。
そんな感じで息がつまるような生活が続いた。
フルタイムに残業も時々ある仕事。通勤時間は満員電車で往復2時間以上。家事、子育て、受験対策、親類付き合い、夫の世話等等と忙しくて、年に数回は高熱を出して寝込むことがある。
周囲の住宅の奥様達は、優雅にフラダンス、ピアノ、手芸教室、高級料理教室、日本絵画教室、日舞やゴルフ、テニスにお茶会と優雅に暮らしている。
収入的に差はないはずなのに、この差は何なんだろうと思う。他人の芝生は青いんだよと言い聞かせながら、日々満員電車にのり、残業し、クタクタになって返り、食事を作り夫の世話をして…
そうして気づくと息子の受験の年が迫ってきた。
あと少しだ。
だが、大騒動が起きた
息子は夫達と同じT大にいかない。K大に行くと言い出したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます