第16話 交渉


 魔王が歩み出し勇者たちの前に立つ。


「一騎打ちをしよう。我が勝てばこの街を破壊する。勇者が勝てば、我々は2度と人を襲わない」


 その言葉は劣勢な勇者たちには好都合であった。モンスターたちは驚いたが何も言えない。


「分かった。だが俺のパーティーだけでは足りない」と勇者。


「そうか、では他のパーティを選べ」


「殺魔の4戦士だ」


 モンスター陣営がどよめく。伝説になっているその名前。遭遇するとトロルでさえも逃げ出すと言われる。「まさか待機していたのか」と声が漏れる。


 殺魔の4戦士が横に並ぶ。老齢ながらも、その覇気は天をも貫く。


「それではかかってこい!」


 しかし、勇者はさらに言う。


「ちょっと待ってくれ、まだ足りない」


「何?」


光の遺跡クリダモスも一緒に戦わせてもらう」

 

 モンスター陣営に激震が走る。


 光の遺跡クリダモスとは世界の半分の軍隊を集めた”北領域統一防衛契約”の中で最強の大隊2110名の事である。現在は遠い西側で活動していた。それが到着したのだ。


「待て、一騎打ちと言っているんだぞ」と魔王も動揺を隠せない。


「魔王と張り合うにはこのくらいは必要だ」


「そうか仕方がない……」


 魔王は交渉が苦手であった。

 

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