第14話 勇者の焦り


 勇者はモンスターの強さに焦っていた。特に魔王が怖い。後方から味方を突風で飛ばし、とどめを刺し続けている。勇者は戦況を変えるための突破口を見出せないでいた。

 

 一方、お化けランプは嬉しくて堪らない。こんなに好戦的な魔王を初めてみる。こうなると、人間共など恐れるに足りず、魔王に向かってくる者はすらいない。砲撃がたまに届くがかすり傷にもならない。


 突風で飛ばされて地で砕け散る人間たち。お化けランプは嬉しさで体を震わせながら現場を見に行った。


 すると突風で飛ばされた人間たちは1箇所の方向に向かっていく。よく見ると、最初に魔王が付けた意味不明な白線の向こう側であった。そこには木の葉がクッションとなり、飛ばされた人間たちが次々とバウンドしていく。バウンドした先には、回復魔道士と衛生班が待機していた。彼らはなぜ負傷者がここに飛んでくるのか、理解できないながらも治療を続けている。


 あまりの衝撃にランプが弾け飛びそうになる。


 もう1度戦場を高所から見ると、傷ついたモンスターは魔王の魔法により後ろに下げられる。瀕死の人間も突風により安全地帯に飛ばされている。

 混乱していた頭が徐々に落ち着く。モンスターも、人も命懸けで戦っている。しかし、魔王は全く逆に両方の命を助けている。


 魔王様それはすでに優しさを超えて、裏切りと狂気ですぞ。

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