第5話 でも、やっぱり魔王は優しすぎる
「おい! そこの勇者ども!」
場に緊張が走る。勇者たちはレベル上げを済ませ、宿に戻る途中であった。
「ま……まさか、魔王か! こんな所に直接襲ってくるなんて」震える勇者。
「に、逃げなくては」女賢者は顔を青くする。
老齢の魔法使いと、赤い鎧の戦士が前に出て「お逃げください! 私たちが盾になります」と叫ぶ。
「お前らは好き勝手仲間を殺し、不利になれば逃げるのか!」
勇者たちは魔王の怒りが理解できない。前に出た戦士と魔法使いは一撃で飛ばされ、戦闘不能となる。
「勇者様だけでも逃げて!」と、賢者は自らを犠牲にする魔法を唱える。
しかし、魔王はその呪文をかき消した。片手を向け波動を送る。突然苦しみそのまま気を失う賢者。
仲間が倒れるのを見て、勇者は怒りに身を震わせる。勇者は、友情や愛を力に変える伝説の剣を持っていた。時空の城で巫女を助けた際に「魔王を倒すために使ってください」と、涙ながらに言われ授けられた剣だ。
千年の封印を解き、それを使う時が来た! 勇者は伝説の剣を握り魔王に立ち向かう!
魔王はその剣を片手で受け止めて、勇者を弾き飛ばした。気を失う勇者。
倒れている勇者達を見る……。魔王は彼らを殺したかった。殺意で手が震える。今でも死んだゴースタンの笑顔が浮かんでくるのだ。
頭を横に振る。殺したら彼らが返ってくるだろうか。違う、そんなことをしても悲しむだけだ……。
そして、勇者達を抱え街の近くに寝かせた。
それを見ていたお化けランプは絶句した。
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