第2話 やっぱり魔王は優しすぎる


 ゴブ子は装備を整えて出発した。


 初めてダンジョンを出る。最近は勇者がレベル上げのためにモンスターを無差別に狩っていると聞く。なんと物騒な。


 ふと、後ろを向く。


 やっぱり付いてきている。


 先ほどから、魔王様が後を付いてきているのだ。監視のためかと思い、肩に力が入ったがどうやら違うようだ。


 なぜなら、目に涙を溜めているから。


 ――――

 

 ダンジョンをしばらく離れると、さすがに魔王様も付いてこないようだ。


 ようやく1人立ちだ。そう考えると急に緊張感が増す。あ、水筒を忘れた。せっかく、魔王様から頂いたものだ。取りに戻ろう。


 しばらく戻ると、どこからか声が聞こえてきた。


「ゴブ子が無事に帰ってきますように」


 木陰で、魔王様が涙を流しながら祈っていた。


「あ……どうしたのだ。ゴブ子こんなところで!」


「すみません。水筒を忘れてきました」


「馬鹿者! そんな間抜けだと、すぐに勇者に倒されるぞ!」


「はい! すみません」


 魔王様は数分間、目が赤いのを誤魔化しながら、少し嬉しそうに説教をしてくれた。


 ――やっぱりこの魔王様優しすぎる。

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