うちの魔王が優しすぎる件について

スノスプ

第1話 魔王は優しすぎる


「ゴブ子よ。我のために尽くせ。勇者を倒し人類を滅亡させよ」


「はい! 私の全ては魔王様にあります。この命を、どうか役立てて下さい」


「良い心がけだ。さあ行け!」


「はい! かしこまりました」


「旅の支度に5Gゴールドやろう」


「ありがたき幸せ」


「待てよ、食事にホテルに、交通費も考えたら……215Gやろう」


「頂けません。そんなに!」


「これはモチベーション向上の為だ。持っていけ! 命令だ」


「なんと寛大な魔王様! ありがたく頂戴いたします」


「待て。やはり遊ぶお金も必要だろう。ゴブリンといえども年頃の女性だ。バッグも買いたいだろう。3万Gをやろう」


「いえ! そんなに受け取れません」


「これは命令だ! 口答えをするつもりか!」


「滅相もございません! 是非受け取らせて下さい!」


「では行け!」


「は! 命を全てを捧げるつもりで行きます!」


「気をつけて行くんだぞ」


「絶対に、勇者を倒してきます!」


「無理はするなよ」


「しかし、一度戦えば身を粉にしてでも諦めません」


「たまに逃げることも大切だ。無駄な兵損は避けたい」


「そ、そうですか。失礼しました! 無駄に命は捨てません」


「そうだ。必ず帰ってくるんだぞ!」


「は……はい」


「勇者を見たら、無理せずに逃げろよ」


「……」


「いつでも帰ってきてもいいからな。お腹痛くなったら帰ってこい。……おやつは持ったか?」


 ――うちの魔王、優しすぎるかも。

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