【再掲】第37話 悪代官







  半端にほどいて垂れ下がったままのサラシを目の前に、全裸待機していたウィラは何を企んでいるのか?


 謎のおばあちゃんと話に夢中だったあたしに対して、ちょっとご機嫌斜めだったにも関わらず、今度は打って変わって悪い笑みを浮かべているのだ。


 もちろん片手は、半端にほどけて垂れ下がったサラシを握っていたのさ?


「ナギぃ?」


 なんだろう、なんとなくウィラの考えることが読めてきた。


 帯よりも長くて、あたしの大きいギフト二つを綺麗に纏めてくれるサラシから連想すればさ、悪代官ウィラのお遊戯に付き合えってか?


「なんだ?……お前、時代劇のお約束をやりたいのか?」


「ふっふっふっ、ナギぃ? あんたういやつやな? ほな、ええんやないか、ええんやないか?」


 待たせた以上は仕方ないし、もう垂れ下がったサラシの端に手を掛けたウィラが、今すぐにでも引っ張りたくてウズウズしているからね?……しかも全裸で。


 中身がおっさん化した、全裸のまま笑みを浮かべた変態恥女の好奇心を満たすことでご機嫌になるなら安いものか。


 ま、あたしも一回ぐらいやってみたかったし、興味がないこともない……やられる側だけどね? HAHAHA!


 周囲の安全を確認、今なら脱衣場に誰もいない。


 さっきよりも視線は痛くないし……あ、番頭のおばちゃん、お騒がせするぜ?


「えーっと、おだいかんさま、おゆるしくださーい」


「いや、棒読み過ぎるがな?」


「「HAHAHA!」」


 ああ、全くもってひどい大根役者っぷりだよ?


「ほんじゃナギぃ、うちな、いっぺん帯回しをやってみたかったんや」


「ああ、わかる……やるなら早くしろよ?」


「ほないくで? ええやないかええやないかぁ~」


「あ~れ~」


「「HAHAHA!」」


 こうしてあたしは、回る回るメリーゴーランドか、時代なのか、喜び悲しみ繰り返すかのように走馬灯が巡る訳でもなく、やがてはくるくる踊るままにさらけ出した大きなギフトが二つ躍り出る。


 筋肉質なあたしの胸に鎮座する、張りのある二つの大きな膨らみは、最後に計った時には三桁の大台に乗っていた。


 揺らぐ視界の中、胸を張ればなんとも頼もしく誇らしげであるが、それを目にしたウィラがあんぐりと口を開いたまま、言葉を忘れて驚愕したのは言うまでもなかった。


 ああ、あたしのギフトはそれだけじゃあ無いんだ。


 サラシに隠れていたお腹周りは、無駄な贅肉の殆どをうまく胸に押し付けたのか、引き締まってバキバキに割れていてさ、ヤンチャな中学時代に出来た勲章と言うか、傷痕が生々しく残ったままだ。


 背中や腰にもあったと思うけど、まあ傷の物語を語ったところで面白い話でもないだろう。


 ま、それよりもさ、コーヒーカップのようによく回ったにも関わらず、あたしはよく体勢を崩さなかったものだけど……ちょっと気分が……悪い、ウィラ……ちょっとだけ支えになってくれよな?


「……ナギ、さすがにこらあかんとちゃうか?」


 全裸待機していたウィラに抱き付き、揺らぐ視界が落ち着くまではこのままで居たいんだ。


 全裸とパンツ一丁で抱き合うのは……ああ、ヤバい……もう百合の花が咲き乱れている光景そのものだよ。


 ウィラ、モゾモゾ動くとさ……あたしもおかしくなりそうだけど、ここは昭和レトロな銭湯の女湯の脱衣場。


 なんとか気持ちを抑えられるだけ、あたしにも良識ぐらいはあるさ?───。







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