【再掲】第30話 JKの中に住んでいるおっさん








  あたしはウィラに対して、残酷と言うには大袈裟だけど、ちょっとした問題があって、突きつけなければならない現実があるんだ。


 ウィラから一緒にお風呂入ろうという誘いを受け、二つ返事で返したいところなんだけどね……。


 勇気を振り絞り、気恥ずかしさを抑えて答えを待つウィラの表情がさ、見てるこっちまでもどかしくなるぐらい……伏せたチャーミングなジト目でゆっくりとあたしの視線に合わせるように見上げ、上目遣いのまま顔を茜色に染めあげるウィラが可愛すぎるものだから……No とは言いたくないんだよ。


 言いたくないんだけど……ウィラ、お前には悲しい現実、ありのままの事実を伝えなければいけないんだ。


 あたしの住む『メゾン サルゴ・リラチンパンジー』、部屋は広めでキッチンスペースも充実しているし、風呂トイレも別だ。


 ネーミングセンス以外は最高で、あたしの家族も気に入る理由はわかる……けどさ、それはあたしが一人で住む分にはって話であり、部屋とキッチンはともかく、それなりに広いバスルームなんだけど……あたしの体格があるからさ、ウィラと一緒にするには狭すぎるんだよな。


 それならば交代しながら浴槽に浸かる……ああ、それはいいんだけどさ、まずはシャワーで汗を流したいだろ?


 その間、どちらかシャワーを使っている間はさ、全裸でどこに待機すればいいんだ?


「ウィラ、残念なお知らせだ……」


 他にも理由はあるけど、それは些細な問題だろう。


 中学時代にヤンチャしていたからさ、身体中に結構傷が残っていたりする……それを見たことで心配させるかもしれないけど、これはバスルームのスペースとは無関係だろう。


 ありのままの事実を伝えよう……あたしの前振りでウィラが、とても残念そうな表情に変わりつつあるから、はやく結論を言わないとね?


「ナギ、もったいぶらんとってはよ言うたってや?」


「ああ、あたしんちの風呂さ、お前が思っているよりも広くねーんだよ……あたし一人でやっとだからね?」


「……あ、せやったわ。あんたが牛久大仏やったの忘れとったわ」


「「HAHAHA!」」


 流石は牛久大仏のネームバリュー、物分かりの良いウィラは即座に納得してくれたね?


 なによりもさ、危うくまたおピンクな魔法に流されるところだったぜ? HAHAHA!


「お前が何を企んでいるかは知らねえけどさ、一緒の湯船に入るって言うのは無茶だぜ?」


「そっか……」


「いや、なに悲しんでいるんだよ? どう頑張っても交互にしか湯船に浸かれないし、その間は全裸待機だぞ?……なんて言うかさ、お前、まじまじと裸を見られても平気なのか?」


 さらに畳み掛けるようにしてなんとかウィラを説得すればさ、ある程度は納得してくれるかもね?


「そらな、まじまじと裸を見られたら……うん、ちょっと恥ずいけど……せやけどナギ、うち一緒に風呂入ろ言うたけどな、一緒の湯船に入るとは言うとらんで?」


「……あっ」


 おいおい、こりゃ考えすぎてしまった結果、どうやらあたしは盛大に墓穴を掘ったらしいね?


 ああ、これじゃあまるであたしがさ、ウィラと一緒の湯船でスキンシップを図ろうとしていたかのようだね?……ああ、さっきまで茜色に染まっていたウィラの表情がさ、段々と悪い笑みを浮かべるものだからどうしたものかね?


 却ってこっちが恥ずかしくなってきたぜ……。


「ナギぃ? あんたがなに考えているかは知らんけどな、うちも正直言うたらそら……あんたのチョモランマな生乳がどうなっとるか、気になるし見たい気持ちもあるんやで? それに比べたらうちなんて大したもん持ってへんし、恥ずいとかそんなん……吹っ飛んでまうやろ?」


 ああ、そういうことかよ。


 あたしの持ち物を堪能した結果、ウィラの好奇心に火が付いたって訳だ……だけど、あたしもウィラがどういう反応をするか気になるからなあ……あ、いいアイデアが思い付いた。


「チョモランマっちゅうか、立派なメロンが二つやで? そらな、あわよくば揉んでみたいし……」


「お前はおっさんか?」


「そらうちらJK言うてもな、中におっちゃんおるやろ?」


「「HAHAHA!」」


 ついにはおっさんと化したウィラの好奇心を満たせて、尚且つ広々とした湯船につかりたい……そんなあつらえ向きなところがあるよな?


 時間的にまだまだ余裕あるし、それじゃあウィラ、ここはお前にクイズでも出そうか?───。







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