【再掲】第29話 自慢のギフトをあなたにも








  ウィラと二人で楽しい夕食の時間を満喫した余韻をそのままに、キッチンシンクに下げた食器を洗い終われば、エプロンの出番はここまで。


 綺麗に畳んでほっと一息つく頃には、客人であるはずのウィラが何か手伝うと言うから、テーブル拭きをお願いしたところ、丁度綺麗に拭きあげ終わったようだ。


「ナギ、お疲れ様やで」


「ああ、ウィラもお疲れ様。見違えるぐらい綺麗になったな、いい仕事をしてくれてありがとう」


「そらやるからにはしっかりやらせていただきますわ」


「ありがとう、普段だったら簡単に済ませちゃうから助かったよ」


「そらご馳走になったわけやし、泊めてもらうんやから当然やろ?」


 ピカピカのテーブルと同じくして、眩しい笑顔を浮かべる彼女はどこか誇らしげ。


 なんだろう、こう言うときはさ、言葉だけじゃ足りないかもしれないね?


 ただなんとなく、不思議とウィラの頭に手を置いて、そのまま撫でていれば恍惚とした表情を浮かべるものだから堪らない……本当、かわいい妹が出来たかのようだね?


「なっ、ナギぃ……うち、犬とちゃうねんで?……せやけど、あっ、やめんでええから……」


 追加オーダーに応えてそのまま撫で続けていれば、ふいにウィラがふわりと揺らいで、あたしの方へと体重を預けてもたれ掛かり、夢と希望がたくさん詰まった肩凝りの原因であたしの悩みの種である……大きな胸に顔を埋めた。


 出会った初日から、ここまで大胆なスキンシップをするなんてね?……本当、考えもしなかったし、むしろ心地いいぐらいに思えるものだから、自然と柔らかく抱きしめたくなったんだ。


「ナギ……」


 それからどれぐらいの時間が過ぎたかは忘れたけど、ウィラに声をかけられて我に返ったあたしは、色々と考えすぎてしまうと言うか、流石にスキンシップが大胆すぎたかな?


「なんだ?……嫌だった?」


 あたしの気遣いのつもりだったかもしれないけど、即座に頭を左右に振ればモゾモゾとした感覚と共に否定した。


「ちゃうねん……嫌なわけ、あるかいな?」


 ならばウィラの温もりを受け止めたまま、優しく撫で続けて満足するまで楽しませてもらうよ?


 全く、今のあたしだったらさ、ウィラに対してやってることと、同じことをマミーに求めたい時もあるけどさ、もう等身が合わないからね?……ああ、なんとなくだけど、ウィラの気持ちがわかった気がするね?


「……ナギ、ありがとう……もうええから……」


 ウィラから終わりの合図を告げられ、ちょっと名残惜しいけれど腕の力を解けば、ふわりと温もりを残して少しだけ、ほんの少しだけ離れてあたしを見上げる彼女の表情は、とても満足げだった。


 おいおい、髪の毛がくしゃくしゃになっちゃったけど、お前は本当にかわいいな。


「ナギ、やっぱあんたはおかんや……うちのおかんに優しく抱きしめてもらってな、撫でてもろたの……そらチビッ子やったとき以来やわ……」


「チビッ子に戻った感想は?」


「そら最高やったで? ナギ、それ言うたらな、あんたが牛久大仏やから出来たことなんや……せやからな、めっちゃ感謝しとるで?」


「あたしのダディーとマミーに感謝してくれよな?」


「せやな、ちゅうかナギ……あんた、さらし巻いて胸潰しとったんやな?……いや、あんたの制服な、背中がちょびっとだけ膨らんでおるっちゅうか、なんかちょびっとだけピンって張っとったやから気になってたんやけど……あんた、どんだけあんねん? この、チョモランマ! 抱かれ心地、最高すぎるやろ!」


 最高の褒め言葉と言うのか、約2mの巨漢のダディーと、約180cmでグラマラスなマミーの遺伝子の両方を授けられたからね?……最高のギフトをウィラに喜んでもらえて嬉しいし、とても誇らしいよ。


「ほんでな、ナギ……お願いがあんねんけど……」


 今日はやけにお願い事が多い気がするね?

彼女が僅かに目を伏せ、左右に視線を泳がせる癖なのだろうか?……ああ、チャーミングなジト目と言うのかな?


 きっとそのうち、この仕草に惚れる男も出てくるのだろうな……いつかは知らないけどね?


「ナギ、うちとな、一緒にお風呂入らへんか?」───。








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