【再掲】第27話 制服とエプロン
◇
ウィラと出会った初日から仲良くなったあたしは、真新しい制服の上にエプロンをかければ戦闘モード。
腕によりをかけ、手料理を作りながらウィラを待っていればドアの向こう側、通路の方から近付いてくる足音が、心地よいリズムを刻めば、あたしの心も踊るって訳さ?
『Ding dong……』「……まいど、うちやで!」
「おう、空いてるから入ってこいよ?」
「おじゃましまーす!」
ドアが開け放たれれば、学生鞄はそのままにお泊まりセットを抱えた、ウキウキ気分でご機嫌な制服姿のウィラが入ってきた。
着替えてくるのかと思ったけれど、何故か制服のまま……いや、あたしも人のこと言えないな? HAHAHA!
「ナギ、あんたの言いたいことはわかるで? せやけどな、明日もあるんやからそら制服持ってこなあかんやろ? うち、ちゃんと着替えも持ってるから安心しい?」
おいおい、エスパーか?
ま、あたしは顔に出やすいからわかるのかもしれないね?
ウィラの事だからその辺の心配はいらないか、あるいは制服を気に入ったのか、いずれにしてもここでお着替えすることになるみたいだね?……ああ、想像したら少し気恥ずかしいね。
「ナギ、そういうあんたも制服のままやないかーい!? なんや、実は気に入ったんとちゃうか? そらシンプルでええ仕立てなんやから、着心地はええねんけど……ま、ええわ。それよかナギ、制服にエプロン、めっちゃ似おうとるわ」
「ああ、家庭的でいいだろ?」
「めっちゃシュッとしてええやん! せやけどあれやな、家庭的っちゅうか、ほぼ店やろ? うちがちょっと帰った間にもうほとんど出来とるし、なんか手伝うことあるんかいな?」
「ああ、もう少しでチキンステーキも完成するぜ? あとは座って待っててくれよ」
ウィラが帰っている間にメインのチキンを仕込み終わり、焼き色を付けながらゆっくりと火を通す傍らで味噌汁の出汁を引いて、油抜きをしたお揚げと切った小松菜を入れて一煮立ちしたら、味噌を加えて火を止める。
チキンの様子を見ながら、レンジでモヤシをチンしたら胡麻油と醤油、鶏がらスープの素、今回はゆかりを加えてナムルを作りながら、味噌汁の味見はおっけい。
蓋を閉めてチキンに集中、焼き上がる頃には味噌汁も適温で提供できることだろう。
合間合間で昨日作ったおかずをレンジで温めつつ、チキンステーキの様子を見ながら……よし、頃合いだ。
ひっくり返してから、バターを一欠片加え、フライパンを傾けながらスプーンで掬って熱い油を表面にかけ、焼き色を均等にしつつジューシーに仕上げるって訳だ。
アロゼって言うフレンチの技法を覚えておいて損はないぜ?……よし、いい感じ。
いったん広げたアルミホイルの上に焼けたチキンを置いて、包んで休ませている間に……ソースはシンプルな方がいいかな?
フライパンの上の余分な油をペーパー等で取り除き、砂糖入れて再び火にかけ、酢、醤油、料理酒、みりん、更にバターを一欠片入れて一煮立ちすれば、チキンステーキに合う醤油ベースのソースの出来上がり。
ここにすりおろし生姜を加えるのもいいね……ああ、今日はそれにしよう。
「めっちゃええ匂いや。お昼あんだけ食べたんやけどな、もうお腹がペコペコやで?」
「ああ、あたしもさ?」
テーブルに並んだチキンステーキ、モヤシのゆかりナムル、厚揚げの煮物、青菜炒め、新ごぼうのきんぴら、すっかり漬かった春野菜の浅漬け、小松菜と油揚げの味噌汁……あとはご飯をよそったら、準備はいいかい?
あたしの手料理を前にして、ご機嫌なウィラの表情を見ているとこっちも嬉しくなるし、腕を振るった甲斐があるよ……さあ、冷めないうちに召し上がろうか。
「ウィラ、さあ召し上がれ」
「いただきます!」
「いただきます」───。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます