【再掲】第25話 サル・ゴリラ・チンパンジー
◇
学校帰りの買い食いと言うウィラのささやかな夢は叶い、満足げな表情を浮かべながら青春の一ページが刻まれた。
気付けばすっかりと日が暮れるまで同じ時間を一緒に過ごし、今にして思えばあたしも同じく、友達と一緒に学校帰りに買い食いした記憶は……もしかしたらさ、あたしもウィラと一緒でささやかな夢を叶えたのかもな?
「ナギ、買い物袋をうちに貸してみぃ? うち今日は暇やし、アイスの礼ぐらいせんとあかんやろ」
「おいおい、気持ちはありがたいけどさ、お前遠回りにならないか?」
「方向的にナギと同いやから問題あらへんで? ほんであんたはどこに住んどるんや?」
「ああ、『メゾン サルゴ・リラチンパンジー』ってとこに住んでいるよ?」
「なんや、ボギー大佐の替え歌みたいやな? サル、ゴリラチンパンジ~♪」
「サル、ゴリラチンパンジ~♪」
「「HAHAHA!」」
「あれ、なんなんやろな? ナギの方もそう言うんやな?」
「そうだな、全国区かもしれないね?」
あの独特なメロディに、日本語で霊長類を当てたらしっくりきたのかは知らないけど、全国の子供達の間で自然発生して定着したんだとかね。
あたしは……最初はなんのことかわからなかったけど、日本語を理解していくうちに笑えるようになったものでさ、ま、昔の英語の替え歌よりはよっぽどマシなものさ?
「ま、それ言うたらな、英語の替え歌よかええやろ? あれ、チョビ髭のキンタ〇言うとるしな」
おいおい、あたしと同じこと考えているなんてさ、気が合うじゃねえか?
「Hitler has only got one ball~♪(ヒトラーのキンタ〇は一つだけ)」
「ナギ、あんたよう知っとるな?」
「ドイツクォーターの前で歌って良いかは迷ったぜ?」
「せやな、ナチネタは堪忍してや?」
「おい、キンタ〇は良いのかよ?」
「「HAHAHA!」」
ま、そんな訳でお嬢様っぽくないと言うか、かわいいウィラの口から出てくるモロな下ネタと言ったギャップが堪らないね?
どこか変わっているけど、芯の通った優しさと言うのか、人の買い物袋を持ちたがるし、やっぱりどこか庶民的なウィラの好きにさせればさ、重い荷物を抱えているのにも関わらず、彼女はご機嫌そのものだ。
「ナギ、こりゃ大量やな? こんなに買ってどないすんねん?」
「おおよそ一週間分の買い物だよ。帰ったら早速常備菜を仕込まないとな」
「そういやあんた、さっき家事全般が得意言うとったな」
「ああ、おかげで花嫁修行は不要だよ? もっとも、誰が貰ってくれるかは知らないけどな」
「ほんならうちが立候補してもええか?」
「「HAHAHA!」」
その後は交代で買い物袋を持ちながら、楽しい会話を繰り広げた帰り道。
あっという間だったひとときの余韻そのまま、『メゾン サルゴ・リラチンパンジー』へとたどり着けば、ウィラが大笑いしたのは言うまでもない───。
◇
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