【再掲】第24話 Baskin R〇bbins
◇
楽しい買い物を終えた次は約束通り、ウィラのささやかな夢を叶えるべく買い食いをするって訳でさ、女子高生らしく Baskin R〇bbins……ところでさ、ウィラは辛うじて理解してくれたけれど、なんでこっちでは通じないばかりか、31って言うんだろうな?
「ナギ、そら日本やからやろ? ここは本場とちゃうで?」
ま、国と文化が違ってもさ、毎日違う味を楽しんで欲しいって言う願いが込められているのかもな?
だからさ、きっとこっちではそう言うんだろうな……ああ、ウィラじゃないけどさ、あたしもこう言いたい。知らんけど。
さて、あたしとウィラが店内へと足を踏み入れれば、揃いも揃って制服の女子で埋め尽くされていた。
近くの公立の中高生、あとはあたしらと同じ制服を着た先客たちは、目移りして注文がなかなか決まらないためか、あたしらがショーケースへと辿り着けるのはいったいいつになるのやら?
ま、気持ちはわかるけどね?
その中でもあたしとウィラは浮いていると言うか、単純にあたしとウィラが平均を越えているからさ、同じ制服なのにこうも違うとはね?
あるいは……大量の食料品の詰まった買い物袋を下げているからか?
「ウィラ、あたしらさ……なんか浮いている気がしないか?」
「そらあんたは牛久大仏やし、買い物袋下げたままやから女子高生言うよりな、もうおかんやろ?」
「ああ、そう言うことか……何故か日独系の関西人もいるから尚更だね?」
「「HAHAHA!」」
さて、お喋りウィラちゃんと笑い合いながら、あたしは何にしようかな?……ああ、限定フレーバーも気になるけど、やっぱりチョコミントかな?
「ナギ、あんたはもう決まったんか?」
「ああ、チョコミント一択」
「ナギ、歯みがき粉味以外にもおいしそうなフレーバーあるやろ?」
「お前の言いたいことはわかる……だが、まったりとした甘さに爽快感を加えるとなれば、チョコミントは最適だと思うぞ? だから困ったときはチョコミント味だし、そこらへんのカップアイスに比べてみろよ? アイスそのものが濃厚だからこそ、ミントでよりが後味すっきりするからな?」
「せやな、うちには理解できへんけど、ナギが言うならそうなんやろな」
チョコミントが歯みがき粉みたいな味だと言うのはわかる。
だけどさ、あたしは少し語れる程度に好きなんだからさ、もう少しオブラートに包んで欲しいよな?
先客達の注文が決まったのか、列が一つ、また一つと進んで行き、いよいよあたしらもショーケースを目の前にすれば、思わず目移りしてしまう同じ穴の狢か。
チョコミントは……ああ、あんまり減っていないね? HAHAHA!
「うわ、どないしよう? キャラメルリボンは決まりやろ? せやけどあと一個が迷うねん……ナッツトゥユー、ラムレーズン、ロッキーロードもええな……ナギ!」
「どうした、迷える子羊よ?」
「牛久大仏のあんたがそれ言うたら宗教的めっちゃくちゃやで?」
「神仏習合、八百万の神様の国だぜ?」
「あ、せやった……って、そんな話やなくてな、うちはどれにしようか迷うねん? さすがにトリプルは欲張りすぎやろ?」
「あたしもロッキーロードが気になるな。じゃ、あたしはチョコミントとロッキーロードで」
「あとで一口もらってええか?……間接キッスやからドキドキすんねんで?」
「そうだな、早く選べよ?」
「いけずぅ……なんてな?」
「「HAHAHA!」」
結局ウィラは、キャラメルリボンとラムレーズンを選んだ。
少し背伸びしたい気持ちと言うのか、ラムレーズンの大人びた芳醇な香りが口のなかに広がれば、思わずお互いに笑みが浮かぶってものさ。
「ふっふっふっ、ナギ、間接キッスやで? ちょっと大人の階段を上ったのかもしれへんな?」
「ロッキーロードのように険しいかもしれねえぜ?」
「ま、上ったらそらええこともあるやろ?……あ、歯みがき粉味はいらんで?」
「「HAHAHA!」」
ウィラにはまだ早いかもしれないけどさ、いつかは食わず嫌い出来ないこともあるだろうし、勇気を振り絞って一歩踏み出せばさ……チョコミント味も案外悪いものじゃないかもしれないぜ?
ま、今は限られた選択肢の中でさ、好きなものを選んで青春していこうか。
もちろん、あたしもね?───。
◇
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