【再掲】第20話 勘違い
◇
駅の方へと向かう帰り道、ウィラとの会話は相変わらずの盛り上がりを見せれば時間の国の迷子となり、あっという間に駅前まで着いたら今日はお別れか……寂しいものだね。
「ナギ、あんたはどこまでいくんや?」
「あたしか? ああ、駅近のあの辺だよ」
「……えっ、あんた電車に乗るんとちゃうんか?」
「ああ、実家に帰るときはそうだけど……そう言うウィラは?」
「うちも同いやで? なんで改札まで来たんやろな?」
「さあ?」
「「HAHAHA!」」
おいおいマジかよ、あたしはてっきりウィラが電車に乗るものだと思っていただけにさ、帰るついでに駅まで送ったつもりが、とんだ勘違いをしていたってことか。
と言うことはさ、おそらくウィラも同じことを思っていたのか、こりゃ笑うしかないね?
「揃いも揃ってうちら、なにやっとんねんほんまに?」
「あたしはかわいいウィラをエスコートしたつもりだったんだけどな?」
「せやろ? うちはかわええし、そら最高なんやけど、あんたがなんも言わんから勘違いしてもうたわ。ま、ええ運動になったんとちゃいますか?」
「ああ、今日は尚更ね?」
「「HAHAHA!」」
本当、揃いも揃ってさ、お互いに可愛げのある勘違いをしたものだよ。
一頻り笑い合ってからは気を取り直して、どこまで一緒かはわからないけれど、こういう時もあるさ。
旅は道連れ、世は情けの続きといこうか。
「ナギ、あんたはあれか、一人暮らししとるんか?」
「ああ、言ってなかったっけ?」
「それうちなんも聞いてへんけど、あんたそら偉いな」
「えらい……か?」
関西人のウィラが言うと、意味合いが違う事もあるから思わず聞き返した。
多分、大変と言う意味なのか、それともそのままの偉いなのか……全く、日本語ってこう言うところがややこしいよな?
「あんたそらえらい大変なことやし、毎日がトライ&エラーやし、ほんなら偉いに決まっとるやろ?」
「ああ……そいつはどうも。なんだかややこしいね?」
「「HAHAHA!」」
たまに通じないこともあるけどさ、お互いに笑いながら学んで通じ合えるようになるから幸せなものだよな。
おかげで明日は表情筋が筋肉痛になることだろうな。
「ナギ、あんたがあの辺のどこに住んどるか知らへんけど、うちも似た者同士っちゅうか、あっちの方やから途中まで一緒やね」
「ああ、それは奇遇だね?……もしかしてお前も一人暮らしか? どうりでお前もおな中が居ないわけだ」
「せやで? うちもなかなか偉いやろ?……ま、あれや、うちまだなんもなおしとらんから散らかり放題なんやけどな」
「なおす?……なにを?」
「あれや、こっちで言うたら片付けるって意味や」
「言葉や文化も違うんだな……ドイツ語だけは想定外だったけどな?」
「せやろせやろ? あれな、うちのゲルマンの血が騒いでもうたからやってもうたんやけどな。せやけどな、ほんま言うたらな、うち、滑ったかと思ったんやで? ナギ、あんたが拾ってくれへんかったらうち、ボッチやったかもしれへんかったんやから、ほんまにありがとうな」
なんだかんだウィラなら一人でも強く生きていける気がするけど、それはそれで寂しいよな?
あたしだってそうだ、一人じゃ寂しいからさ……。
「へぇ、そりゃどうも……あたしも天使に見えるか?」
「あんたは天使っちゅうかあれや、毘沙門天様y「おいっ」……冗談や?」
「「HAHAHA!」」───。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます