【再掲】第16話 青春をどう過ごす?







  一年生であるあたしらは、入学式とチュートリアルを経て今日はおしまい。


 どこか気まぐれな腹時計とお狐様の導きで、楽しいランチタイムをゆっくりと満喫したらさ、あとは自由時間って訳だ。


 流石に食べ過ぎと言うのか、きつねうどん大盛り、かけうどん(ウィラにお揚げ一枚と麺の一部をあげた成れの果て)、チキンカツ定食大盛りと、その他諸々となれば、これじゃあどう頑張ってもお昼休みの時間だけじゃあ足りないぜ? HAHAHA!


 楽しいランチタイムもさ、色々と邪魔が入ったものでうんざりしたけど、ありがたいことにウィラと小幡がいたからさ、思わず手が出るような事はなかったよ。


 ついでとばかりにウィラも勧誘されてはいたけれど、ドイツ語で断固お断りと意思表示すればどうにかなってしまうのさ。


 英語と違ってドイツ語にはあまり馴染みがないからか、ちょっと怖いという印象を与えるにはうってつけらしく、普通に日本語、むしろ関西弁を喋っているのに外人扱いされていたから、その様子が可笑しくてたまらなかったね?


「カズサちゃん、あんたも勧誘されとったけどあれやな、よう振り切ったな?」


「興味ないっすからね、冷たくあしらうのが一番っす」


「新入生向けのデモンストレーションも数日先だろ? 全く、逸る気持ちもわからなくはないけどさ、TPOを守れって話だよな」


「せやせや、教育とマナーのなっとらん猿と一緒になりたくはないわ」


「そうっすね、言い方はアレっすけど、フォンさんに同意っす」


「せやからなんでミドルネーム呼びやっちゅうねん!?」


「「「HAHAHA!」」」


 昼休みが終わったあたしたちにやっと訪れた平和な一時。


 食べ終わった食器を下げた後、タダで居座るのも悪いから、せめてのチャージ料代わりにドリンクを注文し、詰め込んだお腹が落ち着くまでの食休みを兼ねて、ゆったりとカフェタイムを満喫させてもらった。


「ところでさ、さっきの勧誘を別として……お前ら部活はどうするんだ?」


「うちか? うちはあれや、今んとこ興味湧かへんし、勉学に励んで予習しときますわ。さっさと一年分終わらせたらな、そら楽チンやろ?」


「そうっすね、学生の時間の使い方としては正解っすね。私はそうっすね、気が向いたらマネージャーでもありだと思うんっすけど、生徒会役員も考えてるっす」


「へぇ、ところで生徒会って何するんだ?」


「中学時代にやってたっすけど、生徒を代表した数人で学校運営の補助、いわば大掛かりな雑用係っすね。クラス委員の延長線上と考えればいいっすよ」


「なるほど、ますます興味が湧かないね?」


「「「HAHAHA!」」」


 正直何をしているかわからない活動に身を置く程、人生の貴重な時間なんて使いたくもない。


 そんな事よりも今日の献立をどうしようか、スーパーの特売はどうなっているかの方が興味深いね。


「そらな、進路的にいうたらあれよ、部活動や生徒会の活動で内申有利とか言うんやろうな。せやけどそんなん言うて目立った活動、活躍しとらんかったらおまけ程度やろ。学生やったら勉学優先してな、実力付けた余力でボランティアでもやっといた方が印象エエんとちゃいますか?…知らんけど」


「この国でそれがベターかどうかは知らねえけど、海外だとそうだったりするよな」


「そうっすね、あとは実家の太さとかコネっすね」


「結局世の中それやな」


「「「HAHAHA!」」」


 なんだかJKらしくない会話って言うか、一年生にしてはちょっと達観しすぎだね?


 確かにそうかもしれないし、私立に入った越境組のあたしらは、色々と恵まれているのかもね。


 本当、愛する家族もそうだし、ご縁もあっていい巡り合わせだよ。


「ナギ、そういうあんたはどうなんや?」


「ああ、運動部は勘弁してくれ。身体を動かすのは嫌いじゃないけど、気分が乗らなきゃ面倒臭くてやってらんねえよ」


「なんかもったいないっすけど、気持ちはわかるっす」


「こりゃ運動部泣かせやな、先輩相手でも容赦せーへんし」


「お前が言うなって?」


「「「HAHAHA!」」」


 その後もガールズトークは続き、相変わらず音量設定のクレイジーなチャイムで我に返り、もう一杯ドリンクを注文してから再び没頭。


 姦しいガールズトークを延長しているうちに、気が付けば陽が傾きつつあった……ああ、今度はTPOを守った運動部から再びラブコールが届きそうだね?


 さて、食休みも充分とれたし、また奴らが来る前に帰ろうぜ?───。








 



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